■「読めない」
「読む」とはどういうことなのでしょうか? 文字で書かれたものを一文字一文字音に出す、文章を見てその意味を理解するほか、文章に隠された意味を推察することも「読む」ことです。
英語が「読めない」理由については、英単語を知らない、文字を見て音に変換できない、または読んだことの意味が分からない、意味は取れても時間がかかるなど様々です。しかし、どの段階ができていないのかをわかれば、手立てが探せます。ここでは、複雑な読む力を細分化して説明したScarborough’s Reading Ropeを通して考えます。
■言語理解+単語認識=読む力
このロープでは読む力は【言語理解】と【単語認識】に分かれます。下図の緑の【言語理解】と、オレンジの【単語認識】の両方のロープが固くねじり合うことで強固なロープになります。「よい読み手」は、単語を瞬時に認識でき、スラスラと文章を読んで意味を理解することができるという、強固で安全安心に使えるロープを手にしています。
■5つの糸からなる言語理解
ここで注目したいのは、【言語理解】のロープが更に5本の糸に分かれていることです。その5本は次のような特徴があり、固く結びつけば、目的達成に向けた言語理解の方略が身に付いていきます。
- 背景知識・・・事実や概念など、読もうとする情報について、あるいは理解に役立ちそうな、読み手がすでに持っている知識のこと。
- 語彙・・・語彙の量や幅の広さなど。知っている言葉が多いほど、新しい言葉に出合った時に類推しやすくなります。語彙について考える機会の多さは、使える言葉の量にも影響します。
- 言語の構成・・・語順の正しさや意味を成す文がどのように構成されているかの理解、いわゆる文法の知識。これがなければ読み間違いが起こります。
- 言語による理解と推論・・・言語を使って建設的論理的に考えられる力のこと。読んでいるテキストから類推したり意味を組み立てたりする力や、比喩の意味を理解することなどを指します。
- 文字に関する知識・・・活字の基本ルールだけでなく、「ジャンル」といった、社会的な場面で使用されているテキストの種類とその特徴や、話し言葉と書き言葉の違いなど。状況や場面等に合わせて効果的に読むためには欠かせません。
■単語認識のための3つの力
一方、下部にある【単語認識】のロープは3本に分かれています。これら3つが組み合わされば、単語の認識が無意識にスムーズにできるようになります。
- 視覚による認識・・・一目見ただけで意味や発音がすぐに理解できる単語のことを「sight word」と言います。頻繁に文字を目にして練習を重ねていくと、知っている言葉が増え、多くの単語はパッと見ただけで認識できるようになります。
- 文字と音の変換・・・一つひとつの文字に音があることや、文字が組み合わせにより単語が作られていること。文字がもつ音や、文字の組み合わせと音のパターンについての知識があれば、初めて見る単語でも、文字から音に変換(発音)ができたり、意味を解読できたりします。
- 音韻認識・・・音素(意味をもつ最小の音の単位)や音節、抑揚など。音素とは、単語を構成する、最小の音の単位。
■指導にどんな根拠があるかを確認
文字と音の変換ができない生徒は、学習していない語は読む(音声化する)ことができません。look-and-sayという、教師がカードを見せ、生徒は単語の読み方を言う手法があります。初見の単語や不慣れな単語には非効率であり、いまや「単語の丸暗記」は科学的ではありません。こうした生徒には、フォニックスの指導が効果的です。特にシンセティックフォニックスという、文字と音を一つずつていねいに教えていく方法は、英国を始め導入する国が非常に多くあり、非英語圏にいる日本の子どもたちの実情を踏まえても導入がしやすいものです。
英語が苦手になる理由のひとつは、「英語をスムーズに読むことができないこと」。うまく単語を認識できなければlearn to readが不十分となり、read to learnの読解に進めません。「読む」というのは複雑な行為。だからこそ下位技能を十分に理解した上で、段階的な指導をしていくこと、また日頃の指導の根拠を確認することが大切です。
(参考文献)
- Bilton,Caroline, 2020, "EEF blog: Getting to grips with reading comprehension strategies," Education Endowment Foundation, 14 October 2020.
- AIM Institute, (2023), "Building Literacy Proficiency Through the Reading Rope, AIM Institute for Learning & Research, 14 November 2023.