学校で教える仕事に就くには大学で教員資格を取得します。では、英語を教える場合はどうでしょう。ここでは、英語を教える学問分野であるTESOL/TEFL*関連の学位や修了証の中から、「実際に教える」という点で代表的なものをご紹介します。
*TESOL: teaching English to second and other language speakers(第二外国語としての英語教授), TEFL: teaching English as foreign language(外国語としての英語教授)

国際評価が高いCELTAやトリニティCerTESOL

英語を教える資格として世界で通用する代表的なものはCELTA*(セルタ)やトリニティCerTESOLです。CELTAはケンブリッジ大学英語検定機構が、トリニティCerTESOLはトリニティ・カレッジが認定する資格です。双方ともTESOL/TEFL関連資格の中で最も実用性が高く、国際的に最も認知度が高いものです。特にCELTAについては、世界で年間1万人以上がCELTAのコースを修了しています。Harrisonの調査によると、ヨーロッパ、中東、アフリカの約3分の2、英国内では88%の雇用者がCELTAを求めています。そのため、ここでは特にCELTAについてご紹介します。

非ネイティブスピーカーも多い

CELTAのコース受講にはCEFRでC1の英語力が必要で、非ネイティブスピーカーも取得可能です。2005年にはCELTA取得者の25%が非ネイティブスピーカーでしたが、2015年には50%に増えています。ブリティッシュ・カウンシルのある講師がCELTAを受講した時には、カナダ人、アメリカ人のほかに、南アフリカ、マレーシア、フィリピン、ドイツ人もいたそうです。別の講師は「今まで会った中で最も尊敬しているのはポーランド人のCELTA教師です。言語の知識だけでなく、外国語学習者に対する理解、CELTAのコースで勉強した実践的な指導法やちょっとした工夫など、抜群に優れていました。」

実践的な内容と厳しい認定基準

CELTAの最大の特徴は、何よりも実践的であること。対面での実践的な授業形式での授業が義務づけられており、いわゆる「教育実習」も必須です。教育実習では、英語を母語としない人たちに対して、実際に効果的な指導ができるかどうかを評価する実技試験があり、一定のレベル以上で合格することが求められます。言語の指導方法を知識として知っていることと、実際にやって見せるスキルがあることは異なります。この点がCELTAが高く評価されている理由です。もちろんこのコースでは理論と実践の研究も重視されており、レポート提出・合格も含まれています。

講師の一人は、当時の経験を次のように振り返りました。
「CELTAは本当に厳しかったです。自分の母語とは異なる言語をどう教えるかだけでなく、授業運営の基本についても学びました。知識があるだけでは不十分で、実演できたり、教育実習もありました。コースのチューターからは率直なフィードバックをもらい、実習の準備や本番はものすごいプレッシャーがありました。でもこの経験はとても役に立つ実践的な経験だったと思います。」

監査機構による認定

質の担保についても厳格で、ケンブリッジ大学英語検定機構がCELTAの教授内容や合格基準などを規定しています。この資格は英国の公的な資格・試験監査機構Ofqual**によってレベル5の資格として認定されています。レベル5とは専門的な職業資格を指し、高等教育ディプロマと同程度です。オーストラリアの英語教育機関の認定団体からも認定を受けています。

世界で求められる質

CELTAは実践的であるため、他の知識や理論中心のTESOL/TEFL関連資格とは異なり、CELTA取得者はある程度の授業技術を習得していると判断されます。約60か国の英語教師の求職情報に関する調査によると、7割を超える教育機関が採用時にCELTA取得を求めていることがわかりました。そのため、英語教師の第一歩としてCELTAを取得する人が世界中に多いのはそのような背景があります。(2位は同じくレベル5の資格であるトリニティCerTESOL(23.6%))

一口に英語指導と言っても、学習者の年齢(幼児~高齢者)、目的、対象別(学習者、指導者、教員研修担当者)等によって様々な分野があります。CELTAは英語教師の資格としては入門レベルであるため、経験を積み、研さんを重ねることが必要なことは言うまでもありません。

ブリティッシュ・カウンシルの講師

ブリティッシュ・カウンシルでは英語教師の採用基準として、世界各地で統一したものを設定しています。CELTAもしくはトリニティCerTESOLを取得していることと、最低2年間の指導経験がその基準です。採用後も定期的に研修を受講することを義務づけていますが、それにとどまらず、専門性を高めるために個々に研さんを積む講師がほとんどです。CELTAの上位資格であるDELTA、ヤングラーナー(幼児~10代の学習者)指導、または修士課程に進むほか、各種IELTSやケンブリッジ試験の試験官の資格を取得するなど、その分野は多岐にわたります。

*CELTA: Certificate in Teaching English to Speakers of Other Languages
**The Office of Qualifications and Examinations Regulation (Ofqual) regulates qualifications, examinations and assessments in England.

参考文献
Harrison, C. Does CELTA remain relevant in the 21st century? Cambridge Assessment English official website. 31 October 2018
世界のトレンド:75%がケンブリッジCELTAを英語教師採用の要件に ケンブリッジ大学英語検定機構Webサイト 2018年4月4日