Photo by Victor Frankowski ©

British Council 

障害、言語、距離。3つの壁を乗り越えた国際コラボレーション

『テンペスト~はじめて海を泳ぐには~』は、障害の有無、国籍、性別、年齢、経験の違いなどを超え、あらゆる人々が楽しめる舞台を目指して企画されました。英国の障害者アートムーブメントの先駆的存在であり、2012年のロンドン・パラリンピック競技大会開会式の共同ディレクターを務めたジェニー・シーレイを総合演出家に迎え、日英交流年「UK in JAPAN」の主要プログラムとして2019年2月にスタート。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて延期を余儀なくされものの、2年以上の準備期間を経てついに上演が決定しました。

この作品には、日本、英国、バングラデシュの3か国から障害のある演出家、キャストが参加します。国籍や文化など、それぞれの背景が多様であるだけでなく、障害の有無や種類も異なるため、演出にはそれらを活かした手法が取り入れられています。同時に、新型コロナウイルス感染症の影響によって来日が困難となり、代わりにジェニー・シーレイがリモートで演出をすることとなったほか、英国、バングラデシュの出演者は映像を使った参加となるなど予想外の挑戦に向き合いながら制作を続けてきました。そのため、本公演は障害、言語、距離という、3つの壁を乗り越えた新しい形の国際コラボレーションと言えるでしょう。

障害のある/なしに関わらず、あらゆる人が楽しめる舞台を実現

今回の作品で総合演出を行うジェニー・シーレイは、英国グレイアイ・シアター・カンパニーの芸術監督です。グレイアイ・シアター・カンパニーは、さまざまな障害がある俳優やスタッフによる創作活動を行うことで知られており、彼女自身も聴覚障害のある演出家として活躍しています。手話と音声描写を効果的に取り入れたジェニーの作品づくりは世界的にも評価が高く、本公演でもそのクリエイティブな演出が大きな見どころとなっています。

また、本作では、耳の聞こえない人、聞こえにくい人に向けて、字幕の投影や劇場案内時からの手話・筆談などでの対応をします。目の見えない人、見えにくい人へ向けては、東池袋駅からの劇場までの送迎や上演前に舞台セットなどを説明する音声ガイドを用意するなど、障害のある人も観劇を楽しめる環境を整えています。

ジェニー・シーレイの演出による新しい表現領域に挑戦する本公演は、2012年から続くロンドン・パラリンピックのレガシーを継承しながら、障害のあるアーティストが活躍の場を広げる足掛かりとなり、表現者と鑑賞者、双方のバリアフリーを実現することを目指しています。

シェイクスピア作『テンペスト』をモチーフとしたオリジナル作品

本作はシェイクスピア最後の戯曲である『テンペスト』を現代版として大胆に再構成し、さらに新型コロナウイルス感染症の影響に見舞われた世界の有り様も反映させたオリジナル作品です。『テンペスト』は嵐のあとの風のように透明感が漂う作品だと言われており、運命、大自然の驚異、神々の導き、和解など、ロマンチックで超自然的な要素のなかに、人間礼賛、人間肯定といったシェイクスピアのメッセージを読み取ることができます。その作品のもつメッセージを、さまざまな障害や文化的背景をもつ出演者がいかに表現し、観客へと伝えるのかが見どころです。

ジェニー・シーレイに加え、演出にはワークショップで選ばれた大橋ひろえと岡康史の2名も参加。キャストには、ミュージカル『テニスの王子様』の初演時にデビューし、絶大な人気を博した柳浩太郎のほか日本人4名、英国人3名、バングラデシュ人2名の障害のあるアーティスト、聴覚障害のある母親に育てられたコーダの女優・吉冨さくらを迎えました。文化や言葉、障害の違いを超えて作り上げる新たな『テンペスト」にご期待ください。

公演概要

公演名:『テンペスト ~はじめて海を泳ぐには~』 
日程:2021年6月1日(火)~6日(日) 
会場:あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター) 
公演詳細・チケット情報(Event pageに情報を飛ばす)

テキスト:W.シェイクスピア、パメラ・カーター 
原作翻訳:松岡和子 
テキスト翻訳:永田景子 
総合演出・出演:ジェニー・シーレイ  
演出:大橋ひろえ、岡康史 
出演:大橋ひろえ、瀬川サチカ、関場理生、田代英忠、平塚かず美、柳浩太郎、吉冨さくら 
映像出演:(英国)フィリパ・コール、ファティマ・ニーモーガ、ジャック・ハンター /(バングラデシュ)モハンマド・サダム・ビパリー、モシェド・ミア

主催:ブリティッシュ・カウンシル、公益財団法人としま未来文化財団、豊島区
特別協力:グレイアイ・シアター・カンパニー/ダッカ・シアター
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京

プロフィール

ジェニー・シーレイ

演出家として活躍し2012年ロンドン・パラリンピック競技大会開会式では共同ディレクターを務めた。障害のあるプロの俳優やスタッフによる英国の劇団、グレイアイ・シアター・カンパニーの芸術監督とCEOを1997年から務め、手話と音声描写を効果的に取り入れた革新的な作品を創作、英国内外で高い評価を得ている。また、日本、インド、スリランカ、バングラデシュ、ブラジルなどで様々なワークショップや講演を行っている。2009年英国の舞台芸術セクターのアクセシビリティ向上に大きく寄与し、大英帝国勲章MBEを受勲。2012年ロンドン・オリンピック・パラリンピック競技大会関連文化プログラムのひとつである「Unlimited」ではアーティスティック・アドバイザーを務め、Liberty Human Rights Arts賞を受賞。2015年シグネチャー・デフ賞で優秀貢献賞を受賞。スコットランド王立音楽院及びミドルセックス大学名誉博士、セントラルスピーチ&ドラマスクール、Rose Bruford大学特別研究員。

大橋ひろえ

音のない世界の住人。栃木県宇都宮市私立作新学院を卒業した後、手話演劇やダンス、自主映画製作を始める。1999年、俳優座劇場プロデュースの『小さき神のつくりし子ら』で主役・サラに一般公募で撰ばれ注目される。本作品で第七回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。その後、渡米し、演劇やダンスを学ぶ。2004年、自伝本『もう声なんかいらないと思った』(出窓社)出版。2005年、聞こえない人と聞こえる人が作る演劇を目指してサインアートプロジェクト.アジアンを旗揚げ。ミュージカルからストレートプレイ、朗読劇まで幅広く公演プロデュースする。現在、俳優、手話振付指導、ワークショップ講師などとして活躍中。

岡康史

静岡県出身。劇団午後の自転代表(劇作・演出)。障害者と健常者が同じ舞台に立った”しずおか演劇祭”を経て1996年劇団を旗揚げ。以降20作以上を作・演出。2013年より、静岡での演劇企画「ラウドヒル計画」に演出スタッフとして参加。2013年より静岡県演劇協会事務局長。

瀬川サチカ

東京都出身。関東国際高等学校演劇科を経て立教大学現代心理学部映像身体学科卒。人工関節の女優にしてシンガーソングライター。幼少期より子役として活動。23歳で骨肉腫を患い人工関節置換手術をうける。闘病をきっかけに音楽活動を始め、複数のCDをリリース。現在ではダンス、演劇、音楽など複数ジャンルを融合させたパフォーマンス公演の企画等を行う。

関場理生

1996年生まれ。東京都豊島区出身。2歳のとき網膜芽細胞腫で失明。都立総合芸術高校 舞台表現科 三期卒業後、日本大学芸術学部 演劇学科(劇作コース)に入学。在学中は公演を企画したりワークショップを行ったりと精力的に過ごす。卒業後、ダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドとして対話する場を作る仕事に従事する一方、視覚障害者と演劇を結ぶ架け橋となるべく活動の範囲を広げている。

田代英忠

神奈川県出身。2009年より日本ろう者劇団在籍。2010年10月劇団自主公演「エレファントマン」(シアターX)で役者としてのキャリアを開始。手話狂言は2012年1月「髭櫓(ひげやぐら)」(国立能楽堂)にてデビューを果たす。以後ほぼ毎年出演ないしスタッフとして劇団公演に参加。今回テンペスト公演でシェイクスピア劇初出演となる。

平塚かず美

東京都出身。幼少期から高等部まで、ろう学校で教育を受ける。1981年、黒柳徹子さんの社会福祉法人トット基金付帯劇団「日本ろう者劇団」で、手話狂言や自主公演の記録を担当する。1999年、関東地区ろうあ団体連合会婦人部研修集会(山梨)で『関東ろうあ婦人のあゆみ』を演出し、これまでに数回、演出作品を発表。2019年に『関東ろう連盟女性部50年のあゆみ1969-2019』の映画脚本、監督を努めた。現在「日本ろう者劇団」で、手話狂言の記録、及び狂言台本の製作、2017年よりダイアログ・イン・サイレンスのアテンド、また手話講師としても活動中。

柳浩太郎

ドイツ・ベルリン出身。ミュージカル『テニスの王子様』の初代越前リョーマ役として人気を博す。2003年12月、稽古からの帰宅中に交通事故に遭い高次脳機能障害を抱える。リハビリを経て舞台復帰し、困難と戦いながら演劇集団D-BOYSのサブリーダーとして舞台・映画・テレビで活躍。主な出演作にミュージカル『テニスの王子様』(2003〜2010年)、テレビドラマ『正しい王子のつくり方』(2008年 テレビ東京)など。著作に自伝エッセイ『障害役者〜走れなくても、セリフを忘れても〜』(2010 年 ワニブックス)。2020年2月『夜明け~spirit~』(脚本・演出:畑雅文)に主演。  

吉冨さくら

1999年生まれ。中学生時代より地元広島でアイドル活動をスタート。聴覚障害のある母親に育てられたコーダであり、自身の実話を元に制作されたHANDSIGN『この手で奏でるありがとう』のミュージックビデオは現在までに200万回以上再生されている。出演作に映画『僕が君の耳になる』菊池紗希子役(2021年5月公開)、HANDSIGN(YouTube)『この手で奏でるありがとう』、舞台ドラマデザイン社『ゲートシティーの恋 2020』ソラ・宇崎候補生役(2020年1月)など。

フィリパ・コール

フィリパはサウス・ウェールズ出身の肢体切断のある女優。ロンドン・ドラマ・センターで演技を学び、現在役者として6年の経歴を持つ。舞台や映像において、聴覚障害や身体障害のある人たちが公平に描かれるよう精力的に訴えかけ、社会のありのままの姿がもっと映し出されるべきだと考えている。これからも芸術の世界で活躍するろう者や身体障害者の仲間たちと共に奮闘を続ける。テレビへの出演には、『Coronation Street』『Holby City』『4 O'clock Club』がある。舞台出演は、『The House of Bernarda Alba』(The Royal Exchange Manchester and Graeae Theatre Comapny)、『And Other』(The National Theatre and Graeae Theatre Company)、『Another England』(Little Cog Theatre Company)がある。

ファティマ・ニーモーガ

英国系ナイジェリア人の口話ができるろう者であり、俳優への道を切り開いた。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで放送ジャーナリズムを学ぶ。地域社会の取り組みを支えるフリーランスの映像作家としてテレビ番組制作の世界を経験したのち、芸術の道へと進む。最も新しい出演作品は、手話を用いたライブ・パフォーマンス『Signal Fires』(Fuel / Coombe Farm Studios)。そのほか出演作品に『Small Island』 (National Theatre)、『Mirror Mirror』 (Oily Cart)がある。また、2020年3月に英国ツアーが予定されていた舞台作品『Medicine& Monstrous Daughters』 (Vital Xposure)は、新型コロナウィルス感染拡大のため当面の間、公演中止となった。テレビ出演には、『I Hate Suzie』 (Sky / Bad Wolf)、『Something Special』 (BBC)、『Supersonic』 (BSLBT)がある。

ジャック・ハンター

2017年、クイーン・マーガレット大学ドラマ・アンド・パフォーマンス科学士課程を卒業。TV出演:『Annika』(Black Camel Pictures)、舞台出演:『Cost of Living』(Hampstead Theater)、『All You Need is LSD』(Told By An Idiot / Birmingham Repertory Theatre)、『Let Me Play the Lion Too』(Told By An Idiot / Barbican Center)、ラジオ出演:『Bartholomew Abominations』(Naked Productions / Graeae Theatre / BBC Radio 4)、加えて、Web配信ドラマ『Crips Without Constraints』(Graeae Theatre)に出演。また、エジンバラ・フェスティバル・フリンジとBBCソーシャルにおいて、自身の喜劇的かつ詩的な作品を披露している。

モハンマド・サダム・ビパリー

マダーリプル出身。Rajoir Degree College3年次在学中。ブリティッシュ・カウンシルがダッカ・シアター、グリース・シアターと共にプロデュースし、バングラデシュで初めて上演された障害者演劇『A Different Romeo and Juliet』に出演したアーティストの一人。この舞台での成功を経て、ブリティッシュ・カウンシル、グリース・アターがロンドンで開催している障害者演劇ワークショップに招聘され参加。

モシェド・ミア

Narangonj Nazimuddin Bhuiyan Degree College卒業。障害という概念を壊し、世界の劇場に彼の名を残すことを目指し、バングラデシュ初の障害者演劇『A Different Romeo and Juliet』で演劇のキャリアをスタート。この作品での彼のパワフルで素晴らしいパフォーマンスが評価され、ワークショップを経て本作品への出演のチャンスを得る。

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