高齢化社会とともに生きる:リバプール大学学際ワークショップ
高齢化社会の課題解決のために、学際的なアプローチをどのように用い、新たな研究課題やアイデアにつながる議論を誘発するか?
チャレンジ
大阪での最初のワークショップ実施後、チーム構成を変更し、時にはプロジェクトを修正する必要があった。大阪では、日英という異なる文化圏でそれぞれ実践されている学問的議論のスタイルの違いからしばしば困難が生まれたため、それぞれのスタイルについて簡単な導入を提供した。また、日本からの参加者にとっては、フォーマルな形式のレクチャーの聴講と個々の疑問に答えることが期待されていることが明らかであった。こうしたワークショップのスタイルは、参加者に高齢化問題に関する幅広い知識を与えることにつながったものの、各チームのアイデアを十分に探究する時間が不足するという課題があった。さらなる課題は、チームのダイナミクスと、異なる文化、学問分野、言語の間の壁を超越する能力を引き続き探求することにあった。
大阪大学のパートナーとの直接のディスカッションと電子メール・スカイプなどでの協議により、リバプールのワークショップの目的を共有し、大阪で課題と認識された点に焦点を当てることが可能となった。実際に大阪では、専門スキルの育成を重視することで、参加者の今後のキャリアとプロジェクトをよりよいものにすることができるという点が合意されており、こうしたリバプールでのワークショップの方向性により、ネットワーキング、友情、チームワークの面で大きな成功を収めることができた。
目的
日本と英国の高齢化社会を研究する参加者に、協働と交流、互いから学ぶ機会を提供し、研究および研究キャリア、職を得るうえで役立つスキルを育成する。
プログラムの概要
プログラムは主に以下の3つのテーマに分けられた。
プロバケーション(誘発):高齢化の特定の研究課題に関連したレクチャー、訪問調査とワークショップ
インターベンション(介入):参加者に有用な個人的・専門的スキル開発のためのアクティビティ
コラボレーション(協働):各チーム自身によるメインのプロジェクトワーク。必要に応じてチューターから専門的助言を得た。
レクチャーは6つ、中道正之博士によるニホンザルの群れの研究から導き出された祖母仮説や、ケイト・ベネット博士による、異文化間の研究倫理にフォーカスした倫理的問題のセッションまで多様な分野で実施された。これらプロバケーションには、セント・ヘレンズのリーヴコート・リタイヤメントビレッジなどへの施設訪問も含まれた。コラボレーションの目的は、参加者がチームになってプロジェクトに取り組み、最終的にリバプール大学と高齢者サービスのコミュニティからなる専門家グループに向かってプレゼンテーションを行うことだった。コラボレーションには、交流的側面も含まれており、これには、学長ジャネット・ビーア教授とのフォーマルディナー、デヴィッド・リンチ監督の『ストレイト・ストーリー』の上映や、セント・ヘレンズのガラス博物館である「ストーリー・オブ・グラス」への訪問も含まれた。
プログラムの成果
プロジェクトの成果として、高齢者サービスに関するアイデアを探究し、新しい研究課題につながる一連の興味深いプレゼンテーションが行われた。
- 食を通じた世代間の関係
- 東京オリンピックにおける観光客支援を通じた高齢者の社会参加促進
- 公共スペースのために設計された「スマート・トイレ」
- 高齢者が健やかに生活するために役立つやりがいのある仕事探しをより簡単にする方法
- 人生の終わりを繊細かつ見識ある方法で準備する方法を模索する「死の教育」プロジェクト
コラボレーションをはじめとしたワークショップ全体の成果としては、ネットワークの拡大、友情とチームワークの深化が挙げられる。
リード大学
- リバプール大学
- 大阪大学