学際的なグランドチャレンジ(大きな挑戦)―この時代に平和構築のための知的基盤をどう築くか?

チャレンジ

平和とは一部の限られた人々に与えられる特権ではなく、全ての人々が幸せに暮らすために、誰もが維持しなくてはならないものである。本プログラムの背景は、我々の身の回りで起こっている平和と安全保障に関わる大きな変化である。民族国家はテロの脅威や、集団安全保障への要求の高まりなど、国境を越えた課題への対処に頭を抱えている。日本も平和憲法改正に関する世論が二極化するなど、重要な帰路に立たされており、英国もまた、「国産テロリスト」を生み出す背景の理解と対処に苦悩している。このような背景を踏まえ、本プログラムは「Enslaving the Mind (意識の奴隷化)」をテーマに、平和がどのようなプロセスで民衆を巻き込みながら戦争へと至るかを考える。

目的

  1. 人文科学、社会学、自然科学分野の若手研究者を集め、人間社会を苦しめ続ける大きな課題について協議する。
  2. プログラム実施を通じ、大学外の組織との取り組みの可能性を探る。
  3. 若手研究者のボーダーを超えた協働により、根拠ある主張とクリエイティブな社会との関わり方の基礎を築く。

プログラムの概要

プログラムは2016年9月14日~23日の間、世界初の大学立平和博物館を持つ立命館大学で行われ、15ヵ国・地域出身の22名が参加した。プログラムは3部構成で行われた。

パート1:過去からの学び

パート2:今日の不安定な戦域

パート3:共有する未来の創造

パート1では、立命館大学国際平和ミュージアム見学に次いで、民衆がいかに紛争に巻き込まれていくかを理解すべく、芥川賞受章作家の平野啓一郎氏を招き講義を行った。「私とは何かー『個人』から『分人』へ」と題された講義では、「個人」に対して「分人」という概念がいかに自己肯定や他者尊重に影響を与えるかが述べられた。また、フィールドワークで長崎市を訪れ、平和公園、爆心地、原爆資料館の見学に加え、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)にて、朝長客員教授による「核兵器開発および爆発の非人道的被害」および鈴木教授による「核のジレンマ克服:北東アジア非核兵器地帯に関する提案」の講義を受けた。さらに、長崎市の田上市長や82歳の被爆者・山脇氏との意見交換も行った。

パート2では、講義やディスカッションを通じ、中東の不安定な状況について考えた。パレスチナ人の作家兼弁護士であるラジャ・シャハデ氏による講義「イスラエルはパレスチナの何を恐れているのか?」では、和平実現に不可欠な政治家の意識改革に焦点が当てられた。また、最終発表に向けたグループワークも始まり、参加者らは4グループに分かれて調査や企画作成を行い、「意識の奴隷化」に関連したゲーム制作とポスター展示作りに取り掛かった。

パート3では、引続き最終発表のための作業が続けられた。一方、世界の平和博物館に関する講義や、来年リバプールで実施予定のワークショップのテーマとの関連性について議論が行われた。そして最終日にはグループワークの発表が行われた。

 プログラムの成果

参加者らは講義、議論、そしてフィールドワークを通じて、民衆が争いに巻き込まれていく過程への理解を深めることができた。

社会へのインパクトを重視するRENKEIプロジェクトに相応しく、最終成果物は小・中学生を対象とした展示とゲーム制作とした。グループごとにテーマを選び、国際平和ミュージアムのキュレーターが選んだ各テーマに関連する展示資料1点(2グループは同一テーマを選択)を使った発表を行った。

グループ1:Fearless (テーマ:恐怖/展示資料:ガスマスク)―展示では世界各国のガスマスク使用の歴史と、第一次世界大戦後の日本での状況および人々に与えた心理的影響を説明する。ゲームではプレイヤーが与えられる情報が真実かどうかを考え、恐怖をいかに克服するかを体験させる。

グループ2:Kazuo’s Bento Box(テーマ:長崎・広島の原爆/展示資料:広島で被爆した生徒の弁当箱)―展示では広島の原爆で亡くなった架空の人物カズオにまつわる物語を紹介すると共に、平和な未来のために一人一人ができることは何かを問いかける。ゲームではプレイヤーが長崎市の地形や原爆投下時にあった建物などを知ることができる。

グループ3:The Game of Truth(テーマ:検閲/展示資料:墨塗りの教科書)―展示では検閲の目的や、これまでの世界各国の例を紹介し、民衆の意識に与える影響について問いかけを行う。ゲームではプレイヤーが平和に関する隠されたメッセージを探し、真実を見つけ出す。

グループ4:Overcoming Fear(テーマ:恐怖/展示資料:ガスマスク)―展示では日中戦争時に日本軍によって引き起こされた、中国での忘れ去られた惨事について触れる一方、本プログラム参加者らから寄せられた平和へのメッセージが掲示されている。ゲームはプレイヤー3人が政府役人、警官、市民の役を決め、協力しながら毒ガス攻撃の危機を切り抜ける。

リード大学

  • 立命館大学
  • リバプール大学

(協力:九州大学)

問合せ先

renkei@britishcouncil.or.jp

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