日英の若手研究者にとって異文化・異分野を超えた協働のために必要なスキルとは?

チャレンジ

いま世界が直面するグランドチャレンジ的な問題の解決に貢献できる将来の研究リーダーになるためには、従来のように研究者自身の博士論文研究やポスドク研究の一部として実施する研究スキルを身につけることに加えて、より広範な視野をもつことが必要である。すなわち、ますますグローバル化する世界において、異文化を超えかつ自身の学術分野の領域の違いを超えて協働できるためのスキルである。グランドチャレンジ的な問題解決の多くは、多様な異なる領域についての知識が必要であり、世界に広く通用する解を見いだすためには、異なる国からの見方や異なったアプローチを展開していかねばならない。この意味から、異文化・異分野の人たちとコミュニケーションをとりながら効率的に協働を進めることのできる能力が将来の研究リーダーには必須の能力になる。さらにここで培われる異分野の見方・スキル・知識は、実業界やより広く社会のための研究をリードしていくためにも必要となる。意思伝達の仕方や文化の違いを意識し、領域の違いを超えて協働していくことのできる能力は若手研究者の将来のキャリアにとって不可欠となることは言うまでもない。

目的

 上記の課題に向けて、本 Researcher Development School では、以下の目的を設定した。

  1. 異分野・異文化の協働を将来リードすることのできるスキル(学界・実業界での文化の理解にたった広い世界観)をもった若手研究者の育成
  2. 目に見える成果を引き出せる協働を主体的に進められる能力の涵養
  3. 日英の研究者ネットワークを持続的に発展させられる能力の獲得

プログラムの概要

 The Collaborating Across Cultures RENKEI Researcher Development School は2部構成で実施された。第一部は2013年7月に英国ブリストルで、そして第二部は日本の京都で同年12月に、それぞれ2週間の会期で実施された。年間を通してのテーマとして「Urban Sustainability and Resilience」を設定し、ブリストル・京都での開催を通じて、参加者達は日英のレンズを通して共通テーマに継続的に取り組んだ。

まずブリストルにおいては、コミュニケーションやチームワーキング、プレセンテーション、起業家精神や産学連携に焦点を当てたワークショップが企画された。参加者たちは、ブリストルをはじめとする英国での Urban Sustainability への取り組みについて多くの専門家からの話題提供を受けた。第二週目には、World Café を実施し上記テーマに関するアイデア創出に取り組み、ここで得られたアイデアをもとに、最終日には異文化混合チームによるイニシャル・プランとして提案をまとめ、発表した。

続く京都では、各チームはブリストル以来SNSなどを介して議論を交わし深めてきたプランについて、日本企業の代表者やRENKEI のオーガナイザを前に発表した。そして日本文化に通底する精神的バックボーンや、日本に固有な Urban Sustainability and Resilience の側面について、ワークショップでの体験学習や専門家からの話題提供を通して学んだ。以上の体験をもとに二度目の World Café を実施し、テーマに沿った新しいアイデアや解決法を見いだすべく議論を深め、最終日にこれまでの日英でのスクールでの議論を総括しまとめあげた内容を発表した。

*  World Café とはテーマ毎に4~5人単位の小グループに分かれ、ブレーンストーミングによる議論の収斂を図る一方で,メンバーの組み合わせを変えながら議論の発散を促し話し合いを続けることによってあたかも参加者全員が話し合っているような効果が得られる手法である.人々がカフェにある空間のようなオープンで創造性に富んだ会話ができ、新しい知識や活動の創発を可能とする。

 プログラムの成果

本スクールの主たる目的は、参加者間での異分野・異文化による協働ができるスキルを涵養することにあった。加えて、本スクールでは Sustainability and Resilienceという差し迫ったグランドチャレンジの実問題に対して、確かな解決策を見いださせるとともに、そのための持続的な研究者ネットワークを構築させることを主眼においた。これらの目的は、最終的にはオーガナイザが当初期待した以上の成果を上げることができた。

4組のチームは、そもそも与えられたグランドチャレンジ問題に対する思いを共有できる者たちが集うところから始まったが、いずれの参加者も議論を通じて互いの理解を深め合い協働できたことを感想として述べており、このことは強固なネットワークが構築できたことの何よりの証であると言える。各チームはそれぞれが独自に見いだした協働のスタイルを実践し、前半はブリストルの、そして後半は京都のレンズを通したアイデア創出が活発に行われた。

各チームは、ブリストル・京都においてプランを練り上げ、明瞭かつ自信に溢れた発表を何回もこなした。発表を聴いた産学からの聴衆の反応も良好で、その発表の質と提案の完成度の高さについて高い評価を得た。発表者達はこのようなスクールでの経験を通じて、発表スキルの上達をしっかりと自覚することができた。

ブリストル・京都それぞれのスクール終了時に、参加者全員にオンラインでの参加後の感想についてのフィードバックをオフィシャルに求め、収集した。参加者達は、さまざまな評価項目について、感じ方や知識、獲得できたスキルの面において、自己の内部で劇的な変化を経験できたことを述べている。

とりわけ、参加者は専門性の違いを超えて、異なる組織や文化を経験してきた人達と協働できる能力が確実に身に付いたことを述べている。チームで協力していくことの有用性や、創造的で革新的なアイデア創出の重要性、そして協働による意義を踏まえ、実業界をはじめ多様な聴衆に向けた説得力ある研究説明のあり方について考えるようになったことを述べている。参加者達は、自身の強みや欠落しているところを自覚し、個々人のパーソナリティの違いがチームとしての活動に対してどのように機能するかについても理解することができるようになった。異分野の研究者達や各領域での先人達、そして実業界からの人達を含めてネットワークを築いていくことへの自信が得られたことを述べている。

自分たちの体験談を話し合うことの意義は大変大きなものがある。参加者達は、このスクールがこれまでの自身の生活を大きく変えてくれる契機となる経験になり、将来のキャリアパスが大きく拓かれる思いを強くしたことを述べている。以下に典型的な参加者からの感想を揚げる。

「このスクールは本当に素晴らしかった。大げさではなく私の生涯にとって忘れられない最良の4週間となった。多くを学ぶことができたし、いかに学べたかも含めて、これまでに私が経験したことのない素晴らしいものだった。用意されたイベントの構成は申し分無く、ファシリテータや同僚達、そして話題提供者の誰もから大きな刺激を受けることができて、本当に素晴らしい掛け替えの無い経験になった。」

このスクールで培われた参加者相互の強い絆は決して断たれることは無く、今後のキャリアや生活において、またこの絆を必要とする時が必ずや訪れることを皆が確信していた。

リード大学

  • ブリストル大学
  • ニューキャッスル大学
  • 京都大学

問合せ先

renkei@britishcouncil.or.jp

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