オープン化された文化遺産研究

オープン化された学術活動と文化遺産とが交わる点に生じる新たな研究の方向性とビジネスの可能性とは?

チャレンジ

オープン化された学術活動は一般的に公共善とみなされているが、近年、公共の権利であるという主張も高まっている。研究のオープン化は、それが適正に実施され支援された時には、革新的な影響をもたらしうる。オープンな学術活動は、ライセンシング、文化的感受性や持続可能性といった複雑な問題を背景に、新しい高等教育とビジネスのモデルをもたらす可能性がある。文化遺産ビジネスは、たとえば3Dプリンタの個人利用とそれが美術館に及ぼす影響など、オープンデータに付随して生じる機会とリスクに直面している。オープンな学術活動は、ライセンス収益の喪失を相殺し、むしろこれらのビジネスの中核的な収益を高めることができるだろう。また、こうした活動は文化遺産へのアクセスを広げ、これまでアプローチすることができなかった社会グループを引き入れることができるようになる。

しかしながら、研究のオープンな共有が利益をもたらすことを制限するような課題も多くある。すなわちデジタル・ディバイド、(障がいなどによる)アクセシビリティの問題、学界における評価と承認のあり方、研究助成と出版助成のモデルなどである。また、研究のオープン化という理想的な概念や高等教育の価値という前提を反映していない政治的アジェンダもますます増えている。したがって、このワークショップでは、オープン化された文化遺産研究を考察することとした。各方面からの専門家が一堂に会し、公共善としてのオープンな文化遺産研究という考え方を俎上に載せ、オープンデータが内包するバイアス、及び知識の共同構築といった問題を検討する。知識はアクセス可能でなければならないが、それは価値を認められ、交換され、獲得されるものでなければならないというのがわれわれの主張である。そうすることで起業的な文化遺産産業およびクリエイティブ・デジタルセクターにとっての機会を創出することができるだろう。

目的

われわれは多くの高等教育機関や記録機関の活動を検討することにより、オープン教育を結集したビジネス(例えば、大規模公開オンライン講座(MOOCs))、オープン研究データ、市民科学、および放送メディアとの関係に、経済的なチャンスを見出している。オープンな学術活動は、文化財において例証されているように、データガバナンスに関する実践を共有し、関連当局を巻き込むことが必要となる。ソリューションのほんの一部を提供するためにも、国境を越え、単独の機関の能力を超えた活動が必要となるのである。オープンな学術活動は、研究データのオープンな共有、ツールやワークフロー文書の公開、市民による科学研究などを通じて、ますます混沌とした状況をもたらすような影響を及ぼしつつある。研究助成機関、慈善団体、国の機関によるオープンアクセスへの圧力は、教育のオープン化という同時に起こりつつある革命を推し進めている。この雪崩のように起こっている複数の動きは、高等教育コミュニティ全体に多大な影響を与えている。当ワークショップでは、(デジタル)文化遺産という文脈において、オープンな学術活動への支持、及びそれらの活動によって得られる利益に関する具体例を検証することをねらいとした。

プログラムの概要

ワークショップは以下の要素で構成された。

  1. オープン化された文化遺産研究に関連する研究者によるプレゼンテーション
  2. 文化遺産への訪問。平等院、博物館、長江家住宅、二条城など関連施設への訪問が行われた。
  3. オープン化された文化遺産研究に関連する産業界からのプレゼンテーション
  4. シンカソン(Thinkathon)を通した将来の方向性

RENKEIネットワークの内外のゲストスピーカーが、ワークショップのテーマに関連するプレゼンテーションを行うことで議論のバックグラウンドを提供し、議論を刺激するとともに、さらなる連携の機会を提供した。

プログラムの成果

ワークショップの成果として、参加したRENKEI大学間のより密接な関係が構築されたと同時に、産業界との連携に関するアイデアや意見が活発に交換された。

このプログラムを通じて、RENKEIとWUN(Worldwide Universities Network)のメンバー大学、及び産業界の間に存在する研究の専門知識をより深く理解し、真に学際的でグローバルな専門家ネットワークを構築することができた。

参加者は、イギリス、日本、そして他国からの参加大学で実施されている最先端の技術と研究に触れる機会に恵まれた。また博物館からの参加者を通して今日の産業界とのパートナーシップに関する理解を深められたほか、英国大使館の科学技術部(Science and Innovation Network)からの参加者の発表を通して、研究助成の機会についての洞察が得られた。

日本との連携を支援するイギリスの組織とのつながりも強化された。当研究への助成の可能性のある団体(大和日英基金)との関係性は、今後も大変有用である。

プログラムを通し、双方向的な会話と議論を奨励することが重要であり、参加者は、グループワークや学際的プロジェクトに熱心であっただけでなく、産業界との連携を深めることにも活発に取り組んだ。

今後のアクションと提携分野について議論が行われ、以下の分野で可能であるとの結論に至った。

  • ブロックチェーンとオープンデータ
  • トレーニング
  • 文化遺産の登録基準とオープンデータ

リード大学

  • 立命館大学
  • サウサンプトン大学
  • ニューカッスル大学

問合せ先

renkei@britishcouncil.or.jp

関連サイト