■授業中にどのようなことをしたらいいのか
テストを単なるイベントに終わらせないために、授業中にどのような指導を行ったかと言いますと、まずウォームアップで思い切り英語を話させることです。簡単な「やり取り」の活動の中で、質問を作る練習等も兼ねて段階的にハードルを上げていきます。その中に既習文法のターゲットなどを組み込むことで、自然に表現が定着していき、使えているという実感を生徒たちが得られると思います。
それから、実際の会話の方略をきちんと導入の知識として与えて、練習の場を保障します。プリントの中に定番の表現をビンゴ形式で入れ、授業中にできるだけ多くの種類の表現を使うことを促します。“Absolutely!“や“Ddefinitely!“など、自分の口癖を作ろうと励ましたりもしました。
また、聞いたり読んだりした内容のリテリングから徐々に自由度の高いスピーキングへと活動のタスクシークエンスを段階的につないでいきます。初めは正確さより流暢さを促します。それから徐々に正確さや適切さが高められるように調整していきます。
初期段階では特に、内容を大事にしました。英語は上手に話せないけれども、話したいこと、伝えたい気持ちがあれば、教室の中には居場所がある。意見を持って伝えることで誰もがグループやクラスに貢献できる、という意識が持てるような授業を普段から作っていく必要があると感じています。
フィードバックは、テスト後に与えるだけのものではなく、生徒たちが次の努力目標を持てるよう次の成長につなげる意識を持って与えることが大事です。また、簡単なチャットから、徐々に論理的な課題解決型のディスカッションへとレベルアップをしていくことによって生徒たちがCan do リストを自分たちでクリアしているという実感を持てたらいいと思っています。
■取組の成果
一番の成果は教員集団がCan doを共有できることだと思います。こういう形でアセスメントをしていく上では、物理的に一人では絶対に無理なので、まずCan do形式の到達目標と評価規準・基準をしっかりと共有すること。それができるようになると、目標・授業・評価の一体化がなされ、授業改善につながるのです。
そして、生徒たちが次の目標に向けて具体的に学習方法を見直し始めるので、主体的な学びにつながります。表現したいことがあるから必要なツールとして英語を学びたい、となる。それを意識して学び始めることで、生徒達たちが自律した学習者になってくれることを期待しています。
■今後の課題
スピーキング活動のトピックに沿った語い、語法等をいかに定着させていくということが大事になっていくでしょう。これからスピーキングタスクの難易度が上がったとしても、自信を失わずに、学習意欲を維持していくのにはどうしたらいいのか。そしてさまざまな授業内言語活動を行っていく中で、生徒たちにとってはその演習、練習をしっかりとできるという、授業と連動した家庭学習課題の量と質を保証しなければならないと思います。
次期学習指導要領では4技能がしっかりとリンクされた内容になっているため、「やり取り」と「発表」を分けるのではなく、やり取りした内容をまとめて発表する、発表したことについて意見をやり取りする、という領域の統合を大切にしながら言語活動を組み立てて教えていく必要があると思っています。
「やり取り」の評価は、本当の「やり取り」の中でしか生徒たちは練習できないし学べないということ、そしてWhatとHowの両方が必要だということ、そしてCan do リストをしっかりと使うということ、これが学びの質の保証になります。そしてパフォーマンス評価は一人では決してできませんので、教員はチームとして働く必要があります。このようなスピーキング・テストの実施は、授業改善に向けてプラスの波及効果があり、生徒の側そして教員の側双方にメリットがあると実感しています。