©

Eoin Carey

2020年までに人口の約30%が65歳以上になると予想され、急速に少子高齢化が進む日本。生産人口の減少、医療費の増大に加え、認知症患者の増加、介護者の疲弊、老人の孤立などさまざまな課題が浮かび上がっています。その中で、いかに健康寿命をのばし、人々が長寿で幸せな人生を送ることができるのか、国や地方自治体だけでなく民間主導で分野を横断したさまざまなアクションがはじまっています。

日本と同様に少子高齢化が急速に進んでいる英国では、ここ数年、文化芸術団体により高齢者を対象に多様な取り組みが展開されています。例えば、ナショナル・ミュージアムズ・リバプールは、コレクションを活用し、認知症の方とその介護者を対象にしたプログラム「ハウス・オブ・メモリーズ」を実施。マンチェスター博物館では、認知症患者とその家族や介護者を対象に、博物館訪問をフルサポートする月例プログラム「コーヒー・ケーキ・カルチャー」を行っています。マンチェスターを拠点とする室内管弦楽団、マンチェスター・カメラータでは、演奏家が音楽療法士と連携しながらケアホームの高齢者を対象に曲作りのプログラムを展開するほか、大学機関とも連携してプログラムの効果検証も行っています。こうした文化芸術機関による取り組みは、医療や福祉といった既存のサポートに加えて、高齢社会の課題に新たな切り口でアプローチできるものとして注目が集まっています。

以下、いくつか英国の文化芸術団体による活動事例を紹介致します。

アーツ・フォー・ヘルス・ コーンウォール・アンド・アイル・ オブ・シリー

2001年の設立以来、英国有数の芸術・保健機関として、創造力を通じた健康と福祉の向上に尽力している。多岐にわたる創造的プロジェクトを企画し、訓練を受けた創造活動の実践者やボランティアと協力して、コーンウォールとシリー諸島の人々に芸術を届ける。特に、高齢者および認知症の人々の健康と福祉を、芸術を通して向上させることに重点を置く。2010年3月には「グラクソ・スミスクライン/キングズ・ファンド・インパクト・アワード」を受賞。選考委員は「小規模な組織ながら、多数の利用者を擁し、活動成果は高水準。リーダーシップを有するダイナミックな機関であり、特に要介護高齢者、認知症患者、ホームレスの人々との活動は革新的である」とその活動を高く評価した。2009年には、介護・入所施設、デイケア施設、病院など、高齢者介護が行われている場所に芸術を結びつけた活動が評価され「ガーディアン公共サービス・アワード」を受賞。以来、病院、介護用住宅から個人宅に至るまで、数多くの刺激的なプロジェクトを通じて、高齢者との活動を進化・発展させ続けている。
アーツ・フォー・ヘルス・ コーンウォール・アンド・アイル・ オブ・シリー Webサイト(英語)

Home Service [ ホーム・サービス]

コーンウォール全域の介護施設で暮らす高齢者にアートを届けることに主眼を置く。アートと介護の領域で活動する数多くのパートナーと協力し、多岐にわたる創造的活動を提供。これまで、食事での会話を促進するカップとソーサーを作るビジュアルアート・プロジェクト、介護施設入居者とその家族や介護者が参加するダンス・プロジェクト、入居者の過去の職業にまつわる物語をキャバレー・パフォーマンスとして表現する文学プロジェクト、入居者がさまざまな手法でランチョンマットを作る工芸プロジェクトなどがある。その他にもプロジェクトが進行中で、新たなプロジェクトも開発中である。入居者、介護者、活動パートナーからの反応はとても前向きである。

Celebrating Age and Ambition [ セレブレイティング・エイジ・アンド・アンビション]

2010年の1年間にわたり、コーンウォール全域の高齢者が、さまざまな創造的活動に参加した。主な活動には、ビジュアルアートや文芸ワークショップ、在宅介護を受ける人との1対1の活動、そしてコーンウォール初の50歳以上の人のためのダンス・カンパニーなどがある。同プロジェクトの全体テーマは「年齢と大望を祝福すること」。集大成はペンザンスのエクスチェンジ・ギャラリーで2日間にわたって開催されイベントで、コーンウォールの高齢者の才能が披露された。2013年6月、同プロジェクトの、高齢者と創造的に活動する、その革新的で熟慮されたアプローチが評価され「アーツ・アンド・ヘルス・サウスウェスト・アワード」を受賞した。

Memory Cafes [ メモリー・カフェ]

メモリー・カフェは、認知症の人と介護者が、同じ体験を持つ人と交流し、活動に参加し、支え合い、情報を共有することができる場所である。すべてボランティアによって運営されている。2011年から2012年まで、コーンウォール全域のメモリー・カフェと協力し、トレーニングを提供するとともに、さまざまな創造活動を支援した。また創造活動の実践者に依頼し、カフェで可能な創造的な活動を知り、気軽に体験できるテイスター・セッションを実施した。

イコール・アーツ

高齢者にアートをより身近に感じてもらい、芸術活動に積極的に参加してもらうことを目指す非営利団体。さまざまな参加型のアート・プロジェクトを通して高齢者の孤立を防ぐ活動をしている。また、「クリエイティブ・エイジング」を促進するための研究を支援するとともに、パートナー機関と連携し、クリエイティブ・エイジング、芸術、認知症といったテーマに対する関心と理解を深めるための取り組みも行っている。介護施設が、創造的なプログラムを取り入れられるよう、介護スタッフを対象にさまざまなトレーニング・プログラムも実施している。
イコール・アーツ Webサイト(英語)

Meet me @ the National Glass Centre 

認知症患者とその介護者がグラス作りに参加するプログラム。

Creativity Matters 

ミュージシャン、ダンサーと介護施設のボランティアが協力して行う5年間のダンス・音楽プログラム。

Creative Ageing Network 

アーティストが主導する介護スタッフ向けトレーニング。

Hen Power 

介護の現場で「ニワトリ(hen)」を使った創造的活動。

Creative Age Challenge 

7つの文化芸術機関(バルティック現代美術センター、ナショナル・グラス・センター、ミドルズブラ近代美術館、ベリック・モルティングス、ブラックウェル館、アボット・ホール美術館)と共に、各機関における認知症患者とその介護者向けのサービスやプログラムを開発。

ウィグモア・ホール

ロンドンのウェストエンドに位置し、室内楽、器楽、古楽、声楽を専門とする世界有数のコンサートホール。間もなく誕生115年を迎える同ホールでは、年間450以上のコンサートが開催されており、世界的人気を誇るソリストや室内楽演奏家が、ルネサンスからコンテンポラリージャズ、そして新しい委嘱作品に及ぶさまざまなレパートリーを演奏している。また、優れた若手アーティストや作曲家のためのショーケースも行っており、若手音楽家の成長に欠かせない場を提供している。また、高い評価を得ている教育プログラムは、革新的な創造プロジェト、コンサート、イベント、オンラインリソースを通じて、幅広く多様な聴衆に提供されている。ウィグモア・ホール、および学校、保育園、病院、コミュニティセンター、介護施設で、年間で450以上行われるイベントとワークショップを通じ、人々と音楽の新たなつながりを生み出している。
ウィグモア・ホール Webサイト(英語)

Music for Life 

介護施設やデイケア施設で認知症と共に生きる人々と、その介護者のためのインタラクティブな音楽ワークショップ・プログラム。人間中心のアプローチをとり、プロの音楽家が8週間にわたり定期的に音楽ワークショップを行い、コミュニケーション、自己表現、対人関係構築を促す環境を提供する。音楽家は即興的手法を使いながら、認知症の人からさまざまなアイデアを引き出し、失われていない機能を足掛かりに、つながりを築くことを可能にする。同プロジェクトは、認知症の人と介護者が、お互いを対等な個人として認識し、新しい視点で見つめ直す機会にもなり、関わるすべての人々に持続的な好影響をもたらしている。また同プロジェクトは、プログラムを実施する音楽家の育成、介護スタッフのスキル向上も重視している。ログラムに参加した介護施設では、介護スタッフが自らの仕事を振り返り、認知症の人と、人と人のつながりを持つことについて理解を深めることで、長期的な良い変化につながっている。また各プロジェクトに認知症専門家が携わり、プロジェクトの体験を通してケアスタッフが自身のケアを再評価する手助けも行っている。現在、主にロンドンで展開されているこのプロジェクトは、フリーランスのプロの音楽家と認知症専門家と共同で実施している。2013年から2014年にかけては、130人以上の認知症の人々がプログラムに参加した。同プロジェクは、ジューイッシュ・ケア、ウェストミンスター・アダルト・サービス、その他ロンドンの医療サービス機関からも委託されている。また現在、バーミンガム市交響楽団と新たな協力関係を結び、ウェスト・ミッドランズ地域へのプログラムの拡大を進めているところである。『ミュージック・フォー・ライフ』は、広範な研究の対象にもなり、その結果オランダの2つの教育機関で新たな教育課程が開発された。また、ロイヤル・ソサエティ・フォー・パブリックヘルスから、芸術と保健活動への優れた貢献によって、特別賞を授与されている。『ミュージック・フォー・ライフ』は、1993年にリンダ・ローズによって立ち上げられ、現在はジューイッシュ・ケアをケアと開発の主要パートナーに迎え、ウィグモア・ホールの教育プロジェクトの一環として実施されている。

ウェストヨークシャー・プレイハウス

英国最大規模を誇る劇場であるウェスト・ヨークシャー・プレイハウス(WYP)は、過去25年にわたって300以上ものパワフルで、活力溢れる演劇作品を制作、発表している。これまでに400万人を超える観客が作品を観劇し、何千もの人々が、創造性を刺激するワークショップやコミュニティ活動、教育プログラムに参加している。WYPの活動は劇場内にとどまらず、その取り組みは、英国内、また国際的にも高く評価されている。コミュニティと教育の専門家14名からなる芸術開発チームは、あらゆる年齢層、経歴、能力の人々が芸術に触れる機会を創出しており、劇場は学びの場としても発展を続けている。若者専用のスペースでは特殊教育を提供するほか、学習障害のある人々のための幅広いプログラムも行っている。また、難民や亡命者と共に行う活動によって、世界で初めて「サンクチュアリ(安全な避難場所)の劇場」となった。そして高齢者との活動は、この分野をリードするものとして評価され、週に1回行われるプログラム『ヘイデイズ』は、劇場による定期的な高齢者参加プロジェクトとしては、英国最大規模を誇る。クリエイティブな参加型プログラムや認知症フレンドリーな公演などの認知症の人々との活動は、劇場にとって欠かせないものとなっている。
ウェストヨークシャー・プレイハウス Webサイト(英語)

Heydays 

2015年に25周年を迎える劇場の主要プログラム『ヘイデイズ(Heydays:全盛期の意)』。55歳以上の人々を対象に週に1度行われるこのクリエイティブ・プログラムは、高齢者が創造性を最大限発揮できる場を提供。300人以上が参加している。

Dementia-friendly theatre Our Time (creative participation)

2010年から、認知症の人々とその家族のための特別なクリエイティブ・セッションを実施。創造的表現、コミュニケーション、友好関係へのサポートがプラスの効果をもたらしている。

Dementia-friendly performances 

2014年初め、WYPは一般の舞台作品を、認知症の人々向けに翻案する手法について検討を開始する。この取り組みはアーヴィング・バーリンのミュージカル『ホワイト・クリスマス』の上演に結実し、この英国初の「認知症フレンドリーな公演」を400人以上が鑑賞した。スタッフ向けトレーニングを実施し、高齢者・認知症の人々のストーリーを積極的に共有していくことで、認知症フレンドリーな劇場として絶え間ない進化を続けている。

エンテレキー・アーツ

ロンドン南東の地域社会に深く根付いた参加型アートプロジェクトを展開する団体である。過去25年間、幅広い年齢のさまざまな人々との活動を通して、人生に変化を起こすような独自の手法を培ってきた。「聴くこと」や「共感すること」に重きを置き、そこから芸術的な表現を導き出すエンテレキーの手法は、地域社会で孤立しかねない人々をつなぎ、創造的なエネルギーを解き放つものとして、英国内で高く評価されている。社会から取り残された個人やグループが、市民としてのつながりを再考する上で、芸術は中心的役割を果たすという信念のもと、(1)長期的な病気や複雑な障害を抱える若者、(2)重度の複合的な障害を抱える成人、(3)学習障害また高齢化に伴う障害のある高齢者(85歳から100歳まで)に向けた活動を行っている。グループの家族、友人、近隣住民といった支援者と共に、パブリックスペースや教会、学校、介護施設、文化施設、サッカー場などでプロジェクトを行っている。エンテレキーは3人の中心メンバー(非常勤)とアソシエイトおよびセッション・アーティストからなる小規模な組織で、大勢のボランティアとともに活動を行っている。
エンテレキー・アーツ Webサイト(英語)

Meet Me at the Albany 

基礎疾患がある孤立した虚弱な高齢者のニーズに焦点を当てたプログラム。

Little Boxes of Memories

ブラジルの高齢者芸術団体カーサ・ダス・ファジズから発想を得て、ロンドン博物館と協力して企画した朗読プロジェクト。病棟・居住介護施設暮らし、一人暮らしの高齢者が重度障害を持つ子どもたちに話を聞かせた。

Home Sweet Home 

フリーダム・スタジオとともに企画。英国における高齢者の体験や願望を探究する演劇作品。この作品は「現代の英国において年を取るとはどのようなものか」という問いを私たちに投げかける。

Big Chair Dance 

サウスバンク・センターとイースト・ロンドン・ダンスとのパートナーシップにより、孤立して暮らす250人の高齢者が4つのダンスを演じた。

21st Century Tea Dance Programme 

孤立した高齢者たちが主催する大規模なパフォーマンス/キャバレーイベント。

サドラーズ・ウェルズ

世界有数のコンテンポラリー・ダンス劇場として知られるサドラーズ・ウェルズは、ロンドンにある3つの劇場で年間を通じて、タンゴからヒップホップ、バレエ、フラメンコ、ボリウッド、最先端のコンテンポラリー・ダンスまで、あらゆるダンス・プログラムを上演し、世界最高レベルのダンスを観客に提供している。また、ダンスの新作を委嘱、プロデュースし、自らの劇場で公演するのみならず世界各地の主要ホールでのツアー公演に送り出している。2005年以降、80本の新作を生み出している。ダンスがより時代に即した形で発展することを支え、意義深く豊かなものにすることで、ダンスに親しみ、理解が深まることを目指している。そして、アーティストと刺激的な新しい作品の創作を支援することで、ダンスという芸術分野の発展に努めている。またこれまで、最高レベルの芸術性と世界有数のリソースが支える刺激的な学びの機会をできる限り多くの市民に提供できるよう、創造的な取り組みを続けている。運営面では非営利組織(charity) として、多様な収入源を維持することで、財政的安定の確保に努めている。
サドラーズ・ウェルズ Webサイト(英語)

Lilian Baylis 

30年間続く、サドラーズ・ウェルズが運営する60歳以上を対象とした芸術クラブ。登録者数は140名、週に1度の集まりには毎回平均40〜60名が参加し、芸術、特にダンスについて学び、議論と実践を行っている。

Company of Elders 

63〜92歳のメンバーで構成されるダンス・カンパニー。有名振付家によるダンス作品を、地域ベースの小劇場から国際的な劇場まで、大小さまざまな舞台で公演している。同カンパニーはテレビのドキュメンタリー番組でも何度も紹介され、世界各国をツアー公演し、ベネチア・ビエンナーレなどのフェスティバルにも参加した。また、彼らに触発され、全英に数多くのダンス・カンパニーが設立されている。ダンスに参加したい、創造的な活動がしたい、身体能力を高めたいと望む高齢者に向けた一般参加型のクラスを、2つの拠点で毎週開催している。

Elixir Festival

サドラーズ・ウェルズが2年に一度開催する高齢ダンサーのためのダンス・フェスティバルで、国際会議も行われる。500名以上の高齢ダンサーが参加し、すべての公演、そして会場内のパブリック・スペースが活気に満ち溢れる。現在フェスティバルの評価報告レポートを準備している。

ナショナル・ミュージアムズ・リバプール

国際奴隷博物館、レディ・リーヴァー美術館、マージーサイド海洋博物館、リバプール博物館、サドリー・ハウス、ボーダー・フォース・ナショナル・ミュージアム、ウォーカー・アート・ギャラリー、ワールド・ミュージアムの8つの施設で構成されている。収蔵コレクションは、印象派の絵画から自然史の標本、タイタニック号の遺留品まで、ヨーロッパの中でも非常に重要で多様性に富んだもので、毎年270万人以上の来館者が訪れる。イングランド内でロンドン以外に拠点を置く唯一のナショナル・ミュージアムである。リバプールおよびマージーサイド地域の主要なミュージアムとしての活動、ノース・ウェスト・イングランド最大の文化機関としての活動に加えて、英国全土、さらには国際的にも波及力のある活動と、4つの特徴的な役割を担っている。NMLは、社会的に公正であることを目指し、市民から資金を得ている機関として、すべての市民に質の高いサービスを提供できるよう努めている。
ナショナル・ミュージアムズ・リバプール Webサイト(英語)

House of Memories

NMLは、人々の個人的な歴史と記憶を認め、理解することは、特に認知症を患う人々にとって非常に価値と意味があると認識している。『ハウス・オブ・メモリーズ』は、社会的包摂をミッションとして掲げるNMLにとって重要なプロジェクトである。2012年にスタートしたこのトレーニング・プログラムは、認知症に対する正しい理解を広め、ミュージアムのコレクションを活用する革新的な方法を介護セクターに提供している。このプロジェクトは、介護において思いやりや尊厳、敬意の必要性とその価値についての理解を促進し、健康と福祉の向上を実現し、認知症を患う人々とその介護者や家族を支援することを目指している。博物館や美術館は、昨日のものから一千年前のものまで、記憶を大切に守ることに長けている。『ハウス・オブ・メモリーズ』のユニークなアプローチは英国でも初めての試みである。博物館や美術館、医療や介護の提供者が協力しながら、コミュニティが一丸となり認知症に対する理解を高めていくプロジェクトである。個人の歴史や人生にまつわる物語が、良好なコミュニケーションのための重要なツールであることが理解できるようにデザインされており、具体的には以下のアクティビティが展開されている。

The Training Day 
演劇の手法を活用し、認知症のさまざまなかたちについての基礎知識を紹介。また、初期のものから進行性のものまで、認知症と診断された人々の家族が直面する困難を探っていく。

Suitcase of Memories 
さまざまなオブジェクト、思い出の品や写真などを使って会話を促すよう工夫されている。それぞれのスーツケースには、多様なレベルの知覚能力を持つ人の嗅覚、聴覚、触覚など多感覚を刺激するアイテムが含まれている。たとえば特定の地域に関するリソース、世代間の比較ができるようなリソース、アートをテーマにしたリソースなど。

My House of Memories 
iPadやその他のタブレット型端末のためのデジタル・メモリー・リソース。NMLと認知症を患う人々によって共同制作されたもので、この種のものとしては世界初。リバプールおよび英国全域に関する記憶と関連性のある多様なコンテンツにアクセスできる。アプリはさまざまな時代の品物をブラウズすることが可能で、音楽と映像によって生き生きと表現され、日々の思い出や行事などについて語り合うきっかけになるようデザインされている。アプリをパーソナライズし、自分だけのデジタル・メモリー・ツリーにアイテムを保存できる。アプリにはまた、家族や医療・介護の支援者のためのアドバイスや情報が含まれている。

マンチェスター・カメラータ

1972年に創立されたマンチェスター・カメラータは、トップクラスの音楽家によるダイナミックなパフォーマンス、優れたアーティストとのコラボレーション、そして音楽によって人間性、社会性を育む先駆的なラーニング・アンド・パーティシペーション・プログラムで知られる英国有数の室内管弦楽団である。その常に革新的なアプローチは、音楽、オーケストラの可能性を拡張してきた。現在ハンガリーの偉大な音楽家、ガボール・タカーチ=ナジが、4期目となる音楽監督を務め、才能豊かなバイオリニスト、アディ・ブレットがコンサートマスターを担う。その先駆的なラーニング・アンド・パーティシペーション・プログラムでは、「Children and Young People in School(学校にいる子ども、若者)」、「Health and Wellbeing(健康と福祉)」、「Youth Programme(若者プログラム)」の3つのテーマを掲げ、コンサートをはじめ、次世代とのコラボレーションや認知症の人の生活の質の向上など、さまざまな方法で人々との結び付きを深める活動を展開している。
マンチェスター・カメラータ Webサイト(英語)

Music in Mind

自宅または介護施設で暮らす認知症の人とその介護者を対象にした先駆的プロジェクト。参加者は、音楽療法士やオーケストラ演奏者と共に、創造的な音楽作りに取り組む。本プロジェクトでは、以下の成果を目標としている。

● 認知症の人とその介護者の生活の質の向上
● 認知症の人とその介護者の関係性の構築または再構築
● 音楽活動を日々のケアに取り入れることでケアの質を高め、薬の使用を減らす
● 新たなケアの手法としての創造的な音楽活動の可能性を提示する

パートナーであるコベントリー大学、マンチェスター大学、ニュー・エコノミー・マンチェスター(経済シンクタンク)と共同で行われるプロジェクトの研究および評価活動は、単にその効果やインパクトを報告するだけでなく、プロジェクトと並走して得られた知見が継続的にプロジェクト本体にフィードバックされ、現場の方針策定などに役立てられている。連携機関には、エイジ・フレンドリー・マンチェスター、アルツハイマー協会、マンチェスター大学、テームサイド・パブリック・ヘルス、ロッチデール社会的投資ファンドがある。本プロジェクトと並行して、マンチェスター大学およびランカスター大学と共同で、エコノミック&ソーシャルリサーチ・カウンシルが支援する「PhD CASE Studentship(博士研究のための奨学金)」を受けたプログラムに取り組んでいる。このプログラムは、認知症の人が音楽に触れた時、脳内でどのような反応や変化が起きるかをリアルタイムで計測する多感覚音楽評価ツールの制作を目的としており、実現すれば世界初、そしてそれは同時に新たな研究分野の始まりともなる。

Portraits of Place 

若年性認知症の人とその介護者のための、創造的な音楽とビジュアルアートのプロジェクトで、アイデンティティ、場所、そして自己の意識や感覚を探る。参加者は、自分の想いや感覚を反映した音楽、歌、ビジュアルアートコラージュを創作し、その作品は一般公開される。このプロジェクトは、認知症の人を、診断結果で定義するのではなく、一人の芸術家として再定義することを目的としている。

マンチェスター博物館/ウィットワース美術館

マンチェスター博物館は、人類の歴史や自然史に関するコレクションを有し、年間40万人以上の来館者を迎える博物館である。工費1,500万ポンド(約26億6000万円)の改装を経て近年再オープンしたウィットワース美術館は、公園内に位置し、国際的にも重要なアートコレクションを持ち、独自性の高い展覧会を実施すると同時に教育の機会を提供している。マンチェスター博物館およびウィットワース美術館が展開するラーニング・プログラムは高く評価されており、これまでに「クロア・アウォード」はじめ数々の賞を受賞している。現在博物館は宝くじ基金から50万ポンド(約8,870万円)の資金提供を受け、社会的に孤立した人々を対象に、市全域でのボランティア・プログラムを主導。またウィットワース美術館は“ 参加” と“ウェルビーイング”をテーマに、公園を舞台に、アート、自然、そして人々をつなぐ方法を模索する新しいプログラム「カルチュラル・パーク・キーパー」を立ち上げた。
マンチェスター博物館 Webサイト(英語)/ ウィットワース美術館 Webサイト(英語)

Age Friendly Manchester Culture Champions

マンチェスターの高齢者を対象にしたボランティアベースでのアンバサダー制度。マンチェスターの高齢者の方々がより文化芸術に接する機会を増やすため、120人を超えるカルチャー・チャンピオンが、同世代の仲間に向けた活動を計画、主導、発信する。

Coffee, Cake and Culture 

認知症患者とその家族や介護者を対象に、博物館訪問をフルサポートする月例プログラム。
コーヒー・ケーキ・カルチャー映像(日本語字幕付き)

Dementia friendly museum / gallery training programme

来館者に携わるスタッフを対象にしたトレーニング・プログラム。

Museum Comes to You 

認知症支援組織などとのパートナーシップにより、マンチェスター博物館のコレクションを介護施設やコミュニティの人々が集う場に持ち出して、地域社会の人々が触れる機会を提供するアウトリーチ活動。

Age Collective seminar 

エイジフレンドリー・ミュージアム・ネットワークに関わるチームとMICRA(Manchester Institute forCollaborative Research on Ageing)とのパートナーシップにより、研究者、臨床医、政策立案者、ミュージアム職員、高齢者とその介護者が参加し、セクターの垣根を越えてオープンに話し合う場を提供。エイジ・コレクティブ(現在は「エイジフレンドリー・ミュージアム・ネットワーク」と改名)は大英博物館が主導するパートナーシップであり、ミュージアムが高齢者の人々により開かれた場になることを目指している。

Treasure Box 

認知症の人々とその介護者向けに組み立てられたモンテッソーリ教育に基づくプログラム。これはマンチェスター博物館のアウトリーチ活動の一環をなし、同博物館の貨幣コレクションのオブジェやイメージを取り込んだ対話型の活動になっている。

ルミネイト

スコットランドで毎年開催される高齢者のためのフェスティバル『ルミネイト』。あらゆる人が年齢を重ねることの意味を探究する機会を提供することを目的に、2012年10月スコットランド全域ではじまった。高齢者が創造力を発揮し、彼らの人生を共有する、ダンス、演劇、音楽、美術、工芸、メディア、アウトリーチなどの幅広いプログラムを実施している。プログラムには高齢者が参加者/観客の双方として参加できるアートプロジェクト、世代を越えた創作活動、高齢のアーティストによる作品、介護を受ける人々に向けた、また、そうした人々と共に作り上げるプロジェクト、高齢化社会の意味を問いかける活動などが含まれる。2014年にはシェトランド諸島を含むスコットランド全域で435にのぼるイベントが開催された。『ルミネイト』の創始パートナーであるベアリング財団、クリエイティブ・スコットランドは、現在もフェスティバルを継続的に支援している。
ルミネイト Webサイト(英語)

Let Me Stay 

アルツハイマー病を取り巻くある家族の体験を追った、ジュリー・マクナマラによるユニークで温かな一人芝居の巡回公演。

Journey 

31歳のベルギー人振付家/パフォーマーのクン・デ・プレテーと87歳のダンサー/教師のアルフェア・プジェの二人が舞台に立つ美しいダンス作品。

You Said You Liked The Dancing

振付家ジャニス・パーカーが、スターリングに暮らす認知症の人々とその介護者と共に制作したインスタレーション作品。

All or Nothing Aerial Dance Theatre 

グラスゴーでのワークショップ・シリーズで、スコティッシュ・バレエ団による『リジェネレイト』プログラムに参加した高齢ダンサーたちが空中ダンスに挑戦。

The Falkirk Cabaret 

『ルミネイト』の閉幕プログラムの一部でもあった合唱イベントのリハーサルに、コーラスディレクターのスティーブン・ディーズリーを招き、二つの介護施設と50歳以上の人々のソーシャル・グループと共に実施。

本サイト内の関連ページ