「覚えるのが難しい」—英語を苦手とする理由としてよく聞かれます。学習者全員の学びを向上・充実させるためには、「人の学びや記憶のしくみ」を踏まえた指導が大切です。

グラスゴー大学のDr. Kuepper-Tetzelを講師にお迎えし、外国語学習における認知科学への応用についてご紹介したオンラインセミナーは、多くの英語教師のご関心を集めました(2026年2月開催)。記録動画をぜひご覧ください。動画は こちら 

理論の紹介で終わらず、授業に取り入れるヒントや、方略を体験できるデモンストレーションもあり、明日から試したくなるアイデアが得られます。

【このセミナーから得られるアイデア】

■「教えたのに忘れる」理由

授業直後はできていても、時間の経過とともに忘れていく現象を、認知プロセスの観点から整理します。教えたのに生徒が忘れてしまうことを、生徒の「努力不足」や教師の「説明不十分」と決めつけてしまいがちです。そもそも学習が「なぜ起こるのか」「どのように確かめられるのか」という視点を理解することが大切です。

■「少し忘れかけた状態で思い出す」―分散学習

少し忘れかけた状態で思い出すことが記憶を強化します。さらに、学習状況や活動に変化を持たせることで脳内の検索経路が活性化され、必要な時に思い出せる、つまり記憶が定着する確率が高まります。長期記憶においては、同じ学習量でも詰め込み学習より、時間を空けた学習の方が優れています。「今できている」ことだけに焦点を当てず、時間をおいて再度取り組むことが重要です。

■「思い出す行為」を促す

小テストが学習に有効である理由を、認知科学の視点から解説します。読み直したり、模倣する行為は「できた気」になりやすいです。一方、「思い出す行為」は練習中こそ難しく感じるものの、長い目で成績向上につながります。この原理を知ることで、テストを評価目的だけでなく、学習を促すための道具としての新たな位置づけができます。

■「難しく感じる授業」は悪い授業ではない

忘れる、思い出せない、時間がかかるといった反応があるとは、教師はつい「授業がうまくいかなかった」と捉えがち。けれどもそれらは、「望ましい困難さ」であり、学習が進んでいるサイン。しかし同時に、生徒に応じた足場かけが必要で、教師の説明を増やすよりも、学習者が思い出す、考える時間を設計することが重要です。「覚えさせる」ことだけに力を入れるのではなく、「思い出させる」ことを重視した学習を取り入れることで、生徒の理解はより深く定着し、長期的な目で成長を支えることができます。

参加者からの感想

・「英語を学習するにあたって、語彙を覚えることに苦手意識のある生徒がたくさんいます。そうした生徒たちの指導に、役立つ内容でした」

・「一気に大量学習させるより、少しずつの積み重ねで、時間をあけてまた繰り返すことで定着度が上がると分かりました」

グラスゴー大学心理学・神経科学部の上級講師。認知心理学を教育に応用する専門家で、科学コミュニケーションにも熱心に取り組む。TILE Network を主導し、Learning Scientists のメンバーとして活動中。

ドイツ・マンハイム大学で認知心理学の博士号を取得した後、カナダ・ヨーク大学、米国ワシントン大学にある「認知・学習・教育の統合研究センター」でポスドク研究員として経験を積む。グラスゴー大学着任前は、英国ダンディー大学で心理学講師を務める。

世界各地でリサーチに基づく教育に関するワークショップや講演を行っており、Evidence-Based Education、National Institute of Teaching の研究プロジェクト、ケンブリッジ大学の「OpRaise(AIが評価を支援する際の可能性とリスク)」プロジェクトなどのアドバイザリーボードにも参加。