かつてイギリスの料理というと、淡白な味付けのゆでた野菜やフライ(揚げ物)というイメージを持たれていましたが、近頃のイギリス料理はまるで食の革命が起きたかのように様変わりしています。この記事ではイギリスのおいしい食材や食事、名物料理を広くご紹介します。
イギリスの料理や食事の評価(食べ物・飲み物)
栄養学の専門家や有名シェフ、メディアによる啓発とともに、イギリスの人々の健康的な「食」への関心が高まり、政府の健康啓発キャンペーンがその流れを後押ししたことで、イギリス料理のおいしさが注目されるようになりました。また、海外旅行や移民の影響で、イギリスの人々が世界中のさまざまな料理を口にする機会が増えたこともきっかけのひとつといえるでしょう。実際、イギリス人がいちばん好きな料理は、今やカレーなのです。
もちろんイギリスにもファストフードやジャンクフードのお店はありますが、イギリスのレストラン文化は世界のトップを争うまでになり、良質で健康的な食事を提供しています。
イギリスの食べ物と特別な食材・食事(食べ物・飲み物)と食事
さまざまな背景や文化を持つ人々が暮らすイギリスでは、世界各国の食材(食べ物・飲み物)を扱うスーパーマーケットが増え、新しい料理や異なる料理を試すこともできます。また、レストランでは食の好みや事情に配慮したメニューを提供しています。
- イギリスの水道水
イギリスの一般家庭の水道水は、飲用水として安全に使用できます(飲用でない場合は、蛇口付近に注意書きがあります)。ボトル入りのミネラルウォーターも販売されていますが、ほとんどのイギリス人は水道水を飲んでいます。 - イギリスのベジタリアン&ビーガン対応食
イギリスではベジタリアン・フードやビーガン・フードの人気が高く、実際、国内に300万~400万人のベジタリアンがいると言われています。ベジタリアンやビーガン向けの食材は、イギリスの多くのスーパーマーケットや商店で手に入ります。小さなレストランであっても、少なくともひとつはベジタリアン・メニューを用意しています。 - 動物保護に配慮した食材
イギリスの多くの店では、より良い環境で飼育された動物の肉、魚、卵を扱っています。例えば、RSPCA(王立動物虐待防止協会)のフリーダム・フードラベルは、家畜が動き回れる広いスペースで育てられたことを示し、「free-range(放し飼い)」や「outdoor-reared(野外育ち)」は、家畜が屋外できれいな空気に触れながら育てられたことを示しています。ただし、こうした肉や魚を扱うレストランを見つけるのは、まだ難しいかもしれません。インターネットを利用したり、地元の人に聞いたりして、探してみてください。 - 宗教食への対応
大きな町や都市にある多国籍食材店やレストランのなかには、ハラール(イスラム法において合法なもの)やコーシャ(ユダヤ教の教義に従ったもの)を専門的に扱うお店があります。専門店以外でも多くのお店で、さまざまな種類の肉、魚、ベジタリアン・フードが手に入ります。 - 食物アレルギーへの対応
多くの店やレストランでは、要望に応じて食物アレルギー(例えば、ナッツ類など)に対応した代替メニューを提供しています。また、ほとんどの食品パッケージの表示から、アレルギーとなる原材料や栄養成分を知ることができます。学校で食事が提供される場合は、事前にアレルギーについて知らせておく必要があります。 - 特定地域のローカル食材
米、麺、パスタやスパイスのような基本的な食材は、ほとんどのスーパーマーケットや食料品店で手軽に購入できます。大きな町や都市では、特定地域のローカルな食材を扱う多国籍食材店も多く見つかります。 - 学校での特別食への対応
学校に学生食堂やカフェがある場合、ハラール、コーシャ、ベジタリアンのほか、食物アレルギーに対応した食事が提供されているはずです。念のため事前に確認してください。 - 健康的な食事
健康的な食生活のために、ほとんどの食品のパッケージには、カロリー、脂質、塩分、糖質、使われている人工添加物が記載されています。買い物する際に参考にするとよいでしょう。 - オーガニック・フード
オーガニック・フード(農薬や人工化学物質を使用せずに育てられた食物)は、大きなスーパーマーケットや専門の食材店で見つけることができます。 - 外食での学生割引
学生は、多くのカフェやレストランで学生割引を受けられるため、外食が必ずしも高価になるとは限りません。学生割引以外にも、「early bird割引(レストランが混まない時間に食事をすることで得られる割引)」も利用してみてください。
伝統的なイギリスの食材と特色(食べ物・飲み物)
自然の景観と海に囲まれた海岸と広く豊かな牧草地を持つイギリスには、新鮮でおいしい食材がたくさんあります。イギリス滞在中に、ぜひイギリスの料理や食事、地元の食材を味わってみてください。
- 魚介類
広大な海岸線を持つイギリスは、新鮮な魚やシーフードの宝庫です。とくに、スモーク・サーモンやムール貝が新鮮でおいしいと評判です。
- 肉類
イギリスの豊かな牧草は、ビーフ・ステーキやラムが最高の品質であることの証でもあります。例えば、ウェールズでは、ガウアー半島の特産品としてガウアー塩性湿地産ラム肉が有名です。ガウアー半島には、ナショナル・トラストのランリディアン湿地が広がり、子羊たちは耐塩性の牧草やハーブを食べて育ちます。そのラム肉は独特で濃厚な風味が感じられます。
- 畜産物
イギリスではチーズの人気が高く、さまざまな種類や風味のチーズがあります。世界で6つの酪農場のみで生産される「ブルースティルトン」、ネトルの葉で包まれたコーンウォール産「ヤーグ」、南西部特産「チェダー」、世界で最もにおいのする「スティンキング・ビショップ」など、イギリス全土で700種類以上が製造されています。好みのチーズを探してみてください。
- お茶
イギリスの人は、誰もがお茶好きです。イギリス人の多くは、お茶の葉が開いたころに牛乳を注いで、ミルクティーにして飲んでいます。
一度は試したいイギリス名物(食べ物・飲み物)
イギリスには、おいしい料理がたくさんあります。イギリスを訪れたら、ぜひ試していただきたい、イギリスならではのおいしい名物料理をいくつかご紹介します。
- サンデーロースト
イギリスの伝統的な食事のひとつで、ローストした肉(牛肉、豚肉、鶏肉、またはラム肉)にローストポテトや野菜を添えた料理。グレービーソースをかけたヨークシャー・プディングとともにいただきます。
- イングリッシュ・ブレックファスト
ベーコンやソーセージといった肉料理に卵料理(スクランブルエッグまたは目玉焼き)、トースト、トマト、ベイクド・ビーンズ、マッシュルームなど多彩な料理をいただくのが「イングリッシュ・ブレックファスト」。イギリス人のほとんどが油で調理した料理(健康に配慮して毎日は食べません)を好みます。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドといった、地域ごとのバリエーションがあります。
- クリーム・ティー
豊かな自然に育まれたデボンシャー産のクロテッドクリームは豊かな風味が評判。ベルベッドのようにまろやかで濃厚なこのクロテッドクリームを焼き立てのスコーンに塗り、たっぷりのイチゴジャムをのせると格別な味わいです。先にクリームをのせてからジャムを塗るのがデボンシャー流です。熱い紅茶を用意すれば、「デボンシャー・クリーム・ティー」の完成です。クリーム・ティーは、デボンシャーやコーンウォールでとくに人気があります。
- フィッシュ・アンド・チップス
イギリス中の家庭で好まれています。白身魚(多くがタラ、コダラ、プレイス)をバターで調理し、チップス(フライドポテト)とマッシュされた豆と一緒にいただきます。
- トライフル
ふわふわのスポンジケーキにラズベリージャム、フルーツ、カスタード、クリームを合わせたデザート。カロリーが気になっても、食べたくなる逸品です。
一度は試したいイギリス各地の料理や名物(食べ物・飲み物)
イギリスの各地方では、その土地で収穫されるとっておきの食材を使った伝統的なローカル料理やデザートを食べることができます。なかでも、代表的なローカル料理をいくつかご紹介しましょう。
- ジンジャーブレッド(イングランドの湖水地方グラスミア)
セーラ・ネルソンのグラスメア・ジンジャーブレッドは、ほかのものとは一味違います。1850年代以来変わらないレシピで、彼女が暮らしていたお店で今も販売されています。 - ベイクウェル・プディング(イングランドのダービーシャー)
1820年、ダービーシャーの町、ベイクウェルにあるホワイト・ホース・イン(宿の名称)の料理人がジャムタルトの作り方を勘違いして、アーモンドペーストと卵を混ぜたものをペストリーではなく、ジャムの上に塗ってしまったことから生まれたお菓子。 - ポークパイ(イングランドのレスターシャー)
レスターシャー州のメルトン・モウブレイのポークパイは、最上級のポークを風味豊かなゼリーとともにハンドメイドの生地で包み込んだ逸品。その仕上がりはまるで、黄金色の宝箱のようです。 - コーニッシュ・パスティ(イングランドのコーンウォール)
コーニッシュ・パスティは、なかに、軽くコショウを効かせた具材(牛ひき肉 、スウェーデン蕪、ジャガイモ、タマネギ)を詰めた料理。大量生産の物が出回っていますが、本来のパイは上部ではなく片側にひだがあり、独特のDの形をしており、素材の食感を残しています。ぜひコーンウォールに足を運び、オリジナルを試してみてください。 - アーブロース・スモーキー(スコットランドのアーブロース)
塩漬けにしたハドック(タラ科)を広葉樹で燻製にした料理。濃厚でスモーキーな風味と飴色が特徴的。アーブロース周辺で伝統的手法で作られるハドックのみが本物とされます。現在では世界中に輸出されています。 - ハギス(スコットランド全域)
ハギスは、羊、豚、牛の内臓をミンチにし、スエット、玉ねぎ、オートミール、牛脂(羊脂)、調味料を混ぜ、動物の胃袋に入れて煮込んだ料理。独特の香りがありますが、良質なハギスの美味しさは格別です。 - ウェールズケーキ(ウェールズ)
ウェールズ中で好まれているウェルシュ・ケーキ。温かい紅茶とともに、ケーキも温めていただきます。丸いパンケーキのなかにドライフルーツを詰めて、砂糖をまぶして仕上げるのが伝統的レシピ。かつては鉄板の一種で調理していたことから、地元ではベークストーン(bakestone)とも呼ばれています。スウォンジー近郊のマドック・ティールームを訪れる際は、定番のほか、ペンデリンのシングルモルトを使用したウェルシュ・ケーキもお試しください。