ブリティッシュ・カウンシルは、横浜市の英国ホストタウン交流事業の一環で、アーツコミッション・ヨコハマ(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)、国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2021とともに、2021年1月28日(木)、29日(金)、「横浜―スコットランド文化交流プログラム」をオンライン上で開催。フェスティバル・シティとして知られるスコットランドの首都エディンバラを拠点とする2団体が日本のアート関係者と意見交換を行いました。

2日目はエディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティで副最高経営責任者を務めるリンゼー・ジャクソン氏がゲスト・スピーカーとして登壇し、「エディンバラ・フェスティバル・フリンジはどのように運営されているのか」と題したプレゼンテーションを行いました。

「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」は、エディンバラで毎年8月に、3〜4週間にわたって開催される世界最大級の芸術祭です。「フリンジ」の起源は、1947年、第1回「エディンバラ国際フェスティバル」に招待されなかった8劇団が自主的に公演を行ったことによります。ジャクソン氏は、このフェスティバルの特徴、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティが組織としてどのような支援活動をしているか、観客とのかかわり方について説明し、参加のためのアドバイスも行いました。

「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」の特徴

フリンジは、アーティストも観客も世界各国から集まる国際色豊かなフェスティバルです。2019年には300以上の会場で約4,000公演が行われ、300万枚を超えるチケットを販売しました。国際フェスティバルに招待されなかった8団体がフリンジを始めたという自主的な精神が今でも根付いていて、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティではプログラム編成は行いません。「誰でも参加できる」こと主旨とし、アーティストに何か観客に伝えたいものがあるなら、会場を見つけて上演してください、というスタンスです。フリンジには何百という会場、プロデューサー、プログラム編成担当者がかかわっていますが、それぞれが独自のプログラムを作っています。

フリンジ・ソサエティの支援活動について

フリンジ・ソサエティの仕事の最優先課題はアーティストと観客をつなげること、つまり観客ができるだけ多くの作品を観ることができる環境作りです。フリンジに参加希望のアーティスト、プロデューサー、プロモーター誰にでも支援、助言をしています。また、観客が観たいものを正しく探せるよう努め、世界に向けても情報発信をしています。

フリンジは世界最大の芸術のマーケット・プレイス。世界中から業界関係者が、作品探しに訪れるので、このイベントを最大限有効活用してもらえるよう努めています。劇場やフェスティバルのプログラマー、放送局、ラジオ局、テレビ局、フィルムコミッションなど、さまざまな業界のプロフェッショナルをフリンジ・ソサエティで「認定」しています。また、業界関係者やアーティストが対面でセッションを持てる機会を作ったり、ワークショップなども開催しています。

観客とのかかわりについて

フリンジの観客は、新しいものを探している人たちです。フリンジ・ソサエティでは、そのような観客たちとかかわりを作ろう、作品で心をつかもうと努力するアーティストのお手伝いをしています。

アンケートによると、4割近くの観客は、「自分が観たい公演を探すのが大変だった」と答えています。プログラム数が膨大なので、選択が難しく、観客の7割近くが一つの公演しか観ていないことがわかりました。観客の約3割はアート団体などをサポートしているということも判明しています。芸術に価値を見出し、文化に対してお金を支払い、アーティストをサポートする意欲のある人たちが、それだけいるということです。また、「フリンジでしか観れないものが観たい」と答えた観客が8割近くいました。

観客とより深くかかわるためにはメディア活用が必要です。フリンジ・ソサエティは、世界各地の放送局、ブロガー、インターネット・メディア、写真家など多様なメディアを公認しています。アート業界関係者に対して行っていると同様に、メディアにも、目的の作品やアーティストとつながることが出来るよう支援しています。

フェスティバル参加のためのアドバイス

プレゼンテーションの最後に、ジャクソン氏は、フェスティバルへの参加を希望するアーティストに向けたアドバイスを伝えました。

「作品を上演する前に、ぜひ一度フェスティバルに来てみてください。プレッシャーのない状態で来ると、環境も理解しやすく楽しめます。そしてコミュニティ作りも大切です。フリンジのアーティストとつながれば、寛大にサポートやアドバイスをしてくれます。またフリンジ経験者や行こうと思っている人たちと連携し、情報を共有すれば、フェスティバル参加が容易になり、ポジティブな体験ができるはずです。海外から参加希望の方は、早くからエディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティにご相談いただければ、さまざまな形でサポートや助言ができると思います」

スピーカー・プロフィール

リンゼー・ジャクソン(エディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティ 副最高経営責任者)

リンゼー・ジャクソンは、シニア・アートアドミニストレーターやライブイベントプロデューサーとして活動する傍ら、現在エディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティの副最高経営責任者を務める。エディンバラ・フェスティバル・フリンジは、世界最大のアートフェスティバルで、アーティストや制作者が国際的なステージで自身の才能を発展させ、発表する最高のプラットフォームである。リンゼーは、最高経営責任者、理事会、幹部役員陣そしてフリンジ・ソサエティのスタッフを、モチベーションを与えるリーダーシップと明確な戦略的指揮を通して支え、ソサエティのビジョン・目的・目標を実践し、事業継続、ガバナンスと戦略立案、デジタル革新と商用化、そしてホストシティにおいてフェスティバルの場を支える教育支援プログラムの発展を牽引する。

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