By 英語教育支援チーム

2021年 06月 09日 15:00

こんにちは、英語教育支援チームのチヒロです。
English Rich(イングリッシュ・リッチ)な授業を実現する条件として、第1回第2回では、教師の英語の使い方について扱いました。最終回の今回は、生徒が必然性を感じ、モチベーションを高める言語活動の工夫についてご紹介します。

条件その5:場面や状況を設定する

コミュニケーションをする時には必ず相手がいて、伝えたい内容や目的があるものです。それぞれの状況や場面に適した表現を使わないと、相手に意図が伝わらないこともあります。そのため、授業で言語活動(アクティビティ)を行う際には、場面や状況、目的等を明確にすることが大切です。

例えば、「情報を伝える」といっても、テレビのニュース、新聞、学校からの連絡など、異なる場面があります。誰から誰に伝えるかでも言い回しが異なりますし、場合によっては決まり文句があります。音声で伝える話し言葉と、文字で伝える書き言葉でも異なります。そのため、コミュニケーションの目的や機能に沿った型である「ジャンル」を取り入れるといいでしょう。

文法についても、「文法はコミュニケーションを支えるもの」という視点で文脈を踏まえて扱います。例えば、命令文は何かを命令・要求・禁止する時などに使い、pleaseを付けるとていねいな表現と説明されることがあります。けれども、文脈や状況を考えないと、相手を不快にし、時には人間関係に影響します。多くの場合、相手は「ムッとした」「不快に感じた」ことをわざわざ教えてくれないので、要注意です。ちなみに、命令文がよく使われる場面は避難指示や急を要する場面、行うことを簡潔に伝える場面です。

場面や状況を踏まえて英語を扱うと、言語の背景にある文化に対する理解が深まるとともに、他者を尊重し、共に問題解決を図ろうとする態度を育てます。何より、具体的な場面で学ぶと記憶に残りやすいとされています。新学習指導要領は、目的や場面に応じて英語を使う力の育成を目指しているので、日々の授業に欠かせない視点ですね。

条件その6:「まだ知らないこと」を尋ねる

外国語の上達のためには、繰り返し練習することは基本。でも、「練習だから」という理由で、すでに自分が知っていることを繰り返し尋ねることになれば、すぐに飽きてしまい、機械的にこなすだけになってしまいます。考えずに行うことは記憶にも残りません。

そこで、生徒が何度でも練習したくなる工夫として、「インフォメーション・ギャップ」を取り入れます。インフォメーション・ギャップ(情報の格差)とは、自分と相手との間にある「まだ知らないこと」。一方が知っていて他方が知らないというように、双方に情報の差があると、コミュニケーションを行う意味があり、授業での活動に必然性を感じることができます。インフォメーション・ギャップがあれば、新しい発見があり、より興味深く、モチベーションが高まります。

授業で言語活動(アクティビティ)にインフォメーション・ギャップを取り入れるには、まず身近なこと、例えば生徒たちの日々の経験や興味関心の違いに焦点を当てます。また、インフォメーション・ギャップを作り出す方法もあります。この場合、タスクを工夫し、お互いが異なる情報を持つように設定します。

言語学習では繰り返し練習することは欠かせませんから、インフォメーション・ギャップを取り入れるのはとても大切です。インフォメーション・ギャップがあれば相手が変わるたびに新しい情報、様々な視点に触れることができるので、飽きることなく練習を繰り返せます。逆に、相手が話す内容をあらかじめわかっていると、自然なやりとりにならないばかりではなく、生徒にとっては学びがリアルではないので、やる気を維持するのは難しくなります。

条件その7:自分ごととして捉える

English richな授業の条件の最後は、自分ごと化です。これは自己関連性とも言い、英語だとPersonalisation、つまり、個人に応じてカスタマイズする(変更したり作り替えたりする)ことです。ここでは生徒が、教科書の題材や情報が自分に関係があると感じることが大切です。

例えば、教科書の題材がスポーツであれば、好きなスポーツや観戦したことがあるスポーツを尋ねるやり取りを取り入れます。また、アクティビティをする時に生徒が自分の意思で選択する、好みを言う等のちょっとした工夫でも、題材を自分にとって身近のもの、自分に向けられたものと感じることができます。授業で扱う言語表現が自分に関係があると感じれば、コミュニケーション活動に対する意欲が高まり、学びが楽しく、記憶に残りやすくなります。

生徒のやる気や興味関心を高めることは、教師にとって悩みのひとつです。しかし、生徒からすれば、「自分は必要とは感じない」「自分に関係があるとは思えない」ものに対してやる気を出すのは少々難しいです。様々な理由から、教科書や指導内容は「生徒が学ぶべきもの」で構成されていますが、生徒は同じように感じていないかもしれません。生徒の知的好奇心を高め、思わず授業に引き込むには、生徒の生活体験や背景との関連づけは大事な視点で、これは動機づけの点から非常に重要です。

自分ごと化は、単元最後のアウトプット活動の時だけでなく、授業のどの段階でも取り入れられます。しかし、自分ごと化には向かない題材もありますし、生徒の背景知識や言語レベルとのバランスに配慮が必要なこともあります。

新学習指導要領では、自分の気持ちや考えを適切に表現し、伝えあう活動が重視されています。これは教科書に書いていることをなぞったり、暗記することではなく、オリジナルな意見を表現すること。また入試でも自分の意見や経験を表現する問題が増えています。こういった点からも、生徒が自分ごとと感じる場面をできるだけ多く取り入れたいものです。

以上3回に分けて、教師だけでなく生徒も豊富に英語を使うEnglish rich(イングリッシュ・リッチ)な授業を行うための条件をご紹介してきました。ここでご紹介した指導技術やアプローチは誰でも習得可能なものです。ブリティッシュ・カウンシルでは、教員研修や教材開発を通じて、English richな授業づくりを支援しています。

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