By ブリティッシュ・カウンシル アーツチーム

2020年 07月 21日 16:30

エディンバラ・フェスティバル・フリンジで、全身白色の衣装で彫刻に扮するストリートパフォーマー
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VisitBritain/Andrew Pickett

2020年4月、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、今夏エディンバラで開催予定だった世界最大級の芸術祭、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ、エディンバラ国際フェスティバルを含む5つのフェスティバルの中止が発表されました。その発表から3カ月、フリンジを主催するフェスティバル・フリンジ・ソサエティが先日、アーティストや会場の存続を支援する新たなオンラインのプログラムを発表しました。今回の挑戦の意義を、フリンジ誕生の背景を通して紹介します。

エディンバラで毎年8月に開催される5つのフェスティバルには、合わせて70カ国から25,000人以上のアーティスト、作家、パフォーマーが参加。開催されるイベントは5,000以上、観客は440万人を超え、エディンバラの街全体がフェスティバル一色に染まります。そんなエディンバラのフェスティバルのなかでも特別な位置にあるのが、アーティストの主体的な動きから生まれ、ジャンルを問わず、アーティストの自由な表現を発表できる場として発展してきたフリンジです。

フリンジが誕生したのは第二次世界大戦の余波が残る1947年。戦争により世界が分断されたなか、文化芸術交流を通して、政治や文化の壁を越えて人々の対話と和解を促進しようとエディンバラ国際フェスティバルが初めて開かれた年です。演劇、ダンス、音楽の分野で世界をリードするアーティストをエディンバラに招き、作品を紹介したエディンバラ国際フェスティバルに対し、その公式プログラムに招待されなかった8つのアーティスト団体が文字通り “周縁” (Fringe=フリンジ) で、自主公演を行ったのです。そうしてスタートしたのが、今や世界最大級の芸術祭となったエディンバラ・フェスティバル・フリンジです。1958年にはフェスティバル・フリンジ・ソサエティが組織され、フリンジ参加を志すアーティストに情報やサポートを提供するほか、公演情報を集約したフリンジプログラムの作成、チケット販売の取りまとめなどを行い、それまで点で存在していた公演が、集合体としての形を持つようになりました。

こうしたルーツを持ち、今ではアーティストの自由な表現と、その発表の場となる大小さまざまな会場をサポートする世界最大級のプラットフォームとなったエディンバラ・フェスティバル・フリンジ。新型コロナウイルス感染症の影響で、70年以上の歴史の中でも前例のない中止という事態に直面した今、オンラインプログラムの立ち上げという新たな挑戦に乗り出したことには、大きな意義があります。

エディンバラ・フェスティバル・フリンジ・ソサエティ、最高責任者のショーナ・マッカーシー氏は、デジタルプログラムについて次のように語ります。

「フリンジのない夏を想像することはできません。毎年このフェスティバルがもたらす爆発的な創造性とコミュニティ意識は他に類を見ないものです。今年はエディンバラの街が舞台となることはできませんが、この素晴らしいフェスティバルの精神を持続させることはとても重要だと感じています。新型コロナウイルス感染症の影響は、毎年このフェスティバルの開催を支えている数え切れないほどのアーティスト、観客、会場、小規模ビジネスなどの関係者にとって壊滅的なものになっています。今回、デジタルプログラムとして立ち上げる、『フリンジ・メーカーズ(FringeMakers)』は、そうしたアーティストやフリンジを支える会場や地域ビジネスを支援するクラウドファンディング・キャンペーンです。また、ライブ配信番組『フリンジ・オン・ア・フライデー(Fringe on a Friday)』や、特設サイト『フリンジ・ピック・アンド・ミックス(Fringe Pick n Mix)』は、アーティストに発表の機会を提供し、スコットランドのみならず世界中の観客に、喜びをもたらすことを目的としています」

現時点で発表されているデジタルプログラム(一部)

  • FringeMakers (フリンジ・メーカーズ)
    アーティストや会場など、フリンジの中止により経済的打撃を受けた人を支援する資金調達キャンペーン。クラウドファンディングプラットフォーム、Crowdfunderが協力。
  • Fringe on a Friday (フリンジ・オン・ア・フライデー)
    FringeMakers キャンペーンの一環で、8月の毎週金曜日にライブ配信する60分のオンラインプログラム。コメディ、音楽、ダンス、キャバレーなど、さまざまなジャンルから、質の高い作品を紹介。出演アーティストや会場が、番組チケットを販売することで収益を得る機会となる。
  • Fringe Pick n Mix (フリンジ・ピック・アンド・ミックス)
    60秒のショートビデオプラットフォーム。フリンジの精神そのままに、誰もが自由に表現し、参加できる。視聴者はビデオにコメントしたり、対話したり、フリンジ協会が設置したアーティストと会場の存続を支援する中央基金に寄付ができる。
  • Virtual Fringe Central (バーチャル・フリンジ・セントラル)
    例年8月のフェスティバル期間中、世界中のアーティストや芸術関係者が集まる拠点で、アーティスト向けのトレーニングプログラムなども数多く開催するフリンジ・セントラル。普段は物理的な場所を持つが、今年はオンラインで再現。アーティスト同士がつながり、コラボレーションしたり、フリンジ・ソサエティのメンバーとリアルタイムで話したりすることができる。また、アートセクターの専門家と協力し、パネルディスカッション、ワークショップ、ネットワーキングセッションなど30以上のオンラインイベントを開催予定。デジタルスキル、パンデミック後の国際ツアー、有色人種のクリエーター不足など、さまざまなテーマを扱う。プログラムは、すべてのアーティストに無料で提供される。
  • Fringe Marketplace (フリンジ・マーケットプレイス)
    今や世界最大級のアートショーケースとなったフリンジは、世界中の舞台芸術関係者とのネットワークを構築する比類のない機会を提供している。Fringe Marketplaceでは、今年のフェスティバルに参加予定だったアーティストとその作品を、世界中のプロデューサー、バイヤーとつなぐオンラインのショーケース・プラットフォーム。今後の国際ツアーや共同制作などの機会を創出し、新型コロナウイルス感染症の影響で失われた国際的なパートナーとの交流の機会を提供する。また、アートセクター関係者向けのプログラムとして、世界のショーケース・プラットフォームの交流セッションなどを開催予定。

デジタルプログラムの詳しい内容、日本から参加できるプログラムや視聴できるコンテンツなどについては、今後も紹介していきます。

ブリティッシュ・カウンシルの『エディンバラ・ショーケース』

エディンバラの夏のフェスティバル開催時期にあわせ、ブリティッシュ・カウンシルは隔年で、世界の舞台芸術関係者をエディンバラに招いて、エディンバラ・ショーケースを開催しています。英国でもっとも旬な舞台芸術作品を、世界のアートプレゼンターに紹介する大規模なショーケースです。1997年の開始以来、本ショーケースをきっかけにこれまで400を超える英国の劇団やダンスカンパニーが、日本を含む海外への進出や国際コラボレーションを実現しています。過去のショーケースで紹介された作品など、ウェブページをご覧ください。

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