CONNECT:塚本亮さん(英語教育専門家)

塚本亮さんは今最も人気を集めている英語教育関係者のひとりです。日本におけるIELTS(アイエルツ)の教育指導で先駆的な役割を担われてきました。IELTSは全世界で毎年約200万人が受験している、世界最大規模の英語能力試験です。
もともと英語が苦手だったという塚本さんはそれを見事に克服し、2007年にケンブリッジ大学大学院に留学。同大学院で修めた心理学の知見と、ご自身の学習経験を生かした指導方法が注目され、国内の有力大学や海外在住の日本人から、IELTSの指導依頼を数多く受けています。
「英国に心を奪われました」と恋焦がれるようにおっしゃる塚本さん。ブリティッシュ・カウンシルとのかかわりや、英語教育に対する思い、英国留学を志す人へのアドバイスをうかがいました。

インタビュアー:安田智惠(ブリティッシュ・カウンシル 試験部長)

留学イベントでIELTSに出合う

安田 塚本さんはIELTSの教育指導を積極的に展開されています。最近は日本人が苦手とするライティング問題を取り上げた参考書『IELTSライティング完全攻略』(明日出版社)もまとめられました。IELTSを知ったきっかけは。

塚本 英国留学を本格的に検討し始めた時に、ブリティッシュ・カウンシルが開催した英国留学のイベントに参加したのがきっかけでした。この時に初めて、IELTSのことを知りました。
以前からTOEFLでも英国留学に対応できることは知っていましたが、情報を集めていくとTOEFLを使った場合はエッセイやインタビューなどが追加で必要になることがわかりました。そうした事情を含めて考え、「留学するなら、やはりIELTSがベストだ。とにかくIELTSを勉強しよう」と決意するに至りました。
今でこそIELTSについては日本語による参考書が出版されていますが、私が勉強を始めた2006年当時は洋書しかなくて参りました。

ベストの留学先、それが英国

安田 なぜ留学しようと思ったのですか。そしてなぜ留学先に英国を選んだのですか。

塚本 元をたどれば、高校生の時の体験が大きいです。
当時、私は問題児のような存在で、何を言っても先生たちに否定されてばかりでした。ところが、英語教師として来日していたカナダ人の先生は違いました。私の考えや意見を「それって面白いね」と認めてくださったのです。
これはとても嬉しく、かつ大きな気づきを得た体験でした。「もしかしたら自分は、とても狭いコミュニティの中に押し込まれているのではないか」と。そして「今いるコミュニティの外に出て、自分という存在を確かめてみたい」と思うようになりました。これが海外を志すようになった根本の動機です。

留学先に英国を選んだ理由としては、まず欧州へのあこがれの気持ちが挙げられます。それぞれの国に独特の伝統と文化があって、それがひとつの地域に織りなされているのが魅力的に映りました。
英国は欧州で中心的な役割を果たしています。そのような英国を拠点にすれば、欧州を横断的に見られるのではないかと考えたのです。
また、英国は、特に教育水準が高い。当然、質の高い教育が受けられる。こうした様々な要素を勘案すると、やはり英国がベストだと思い、英国留学を目指すことにしました。

人との出会いが大きな財産

安田 塚本さんは国内の大学では経済学を専攻していましたが、留学先では一転して心理学を学びました。なぜ心理学を選択したのですか。

塚本 もっと人間のことを深く知りたいと考えたからです。
私はもともと勉強嫌いでしたが、人との出会いや様々な体験をきっかけにそれを克服してきました。なぜ自分がそのように変われたのかを、心理学を通じて探りたいと思ったのです。
もうひとつは、留学後の道として起業を想定していたことが挙げられます。心理学を学んでおけば、人を組織し物事を進める際に、より深いレベルで人との関係を構築し、人を動かすことができるのではないかと考えました。

安田 英国では人文科学が重視される傾向がありますから、塚本さんのご希望にかなう部分が大きかったのではないかと推察します。そのような英国留学で得られたものは。

塚本 たくさんありますが、特に大きかったのが人との出会いです。私は「人はどんな人に出会うかによって、成長のポテンシャルが決まる」と考えています。そして留学時、私は英国人はもちろん、世界各国からやってきたたくさんの人に出会うことができ、数多くの刺激を受けました。
日本に戻ってきてから、私は英語教育を手がけるジーエルアカデミアを起業しました。経営をしていれば、やはりつらい局面もあります。そんなとき、例えば「留学先で一緒に勉強した彼だったら、きっとこのように判断して行動するだろうな」という考えが浮かぶ。その考えに従って行動すると、意外な突破口が開けるのです。
つまり、留学時に出会った人たちが持っていた発想や判断の仕方を借りて、柔軟に対応できる。こうした多様な「思考の軸」が、かけがえのない財産となっています。

英国の素晴らしさを日本に

安田 ブリティッシュ・カウンシルの日本事務所はこのたび60周年を迎えました。次の60年に向けて、日英の文化交流や、英国文化の情報発信をさらに強化していこうと考えております。ブリティッシュ・カウンシルに期待することを教えてください。

塚本 世界は今後もさらにグローバル化が進みます。ますます日本人が海外に出て、海外で活躍する機会が増えることでしょう。
世界にはたくさんの国がありますが、その中でも英国は特に日本との共通点が多いと言われています。だからこそブリティッシュ・カウンシルには、英国の素晴らしさをもっと日本人に伝えてほしい。日本人にとっては、共通点の多い英国を通じて、自国を客観的にとらえるチャンスとなります。私も英語教育を通じて、そのお手伝いをしていきたいと考えています。

留学を目指すなら小さなステップから

安田 塚本さんには帰国後、ブリティッシュ・カウンシルのボランティアスタッフとして、たびたびお手伝いをしていただきました。「英国留学フェア」などのイベントでは、英国留学希望者に対して体験談を語っていただいています。また、ブリティッシュ・カウンシルが運営するIELTS公式ブログでは、IELTS対策についてのコラムを執筆していただいています。これから英国留学を目指す人に伝えたいことはありますか。

塚本 多くの場合、留学は人生において大きなステップです。大きなステップをいきなり踏もうと考えると、尻込みするのが普通です。
そうではなく、小さいステップを一つひとつ踏んでいく格好で取り組んでみてはどうでしょうか。例えば英国の映画を観る。だんだんワクワクしてきて、「英国に行ったらあんなことができそうだ、こんな経験ができそうだ」というイメージがわいてくる。これを積み重ねていくと、大きなステップが比較的スムーズに踏み出せるようになります。
このように考えていくと、留学はひとつの大きな旅だととらえられるのではないでしょうか。英国への大きな旅を、楽しみながら練ってほしいと思います。

塚本亮にとって「UK」とは?

安田 最後に、塚本さんにとって英国はどんな存在ですか。

塚本 「心を奪われた存在」です。英国という言葉を見聞きすると、思わずパッと反応してしまうのです。
ケンブリッジ大学院を修了した2008年以来、渡英していません。今、英国がとても恋しいです。
英国の良いところはたくさんありますが、ひとつは、皆さんおしなべて伸び伸びと生活しているところです。英国の都市は広場や緑地が多く、子どもたちが野原でスポーツをしていたりする。こうした姿を見ているとホッとします。
もうひとつは、国も国民も伝統を重んじつつ、新しいものを受け入れる気概を持っている点です。例えば街は伝統的な建築物を生かしながらも、新しいデザインを取り入れている。年配の女性がミニスカートにレザーブーツを合わせて歩いていたりする。エネルギーを感じる国です。

安田 本日は本当にありがとうございました。英国留学を経て英語教育分野で活躍されている塚本さんは、英国留学を目指す人の「頼れる兄貴」のような存在です。今後のますますのご活躍を期待しております。

 

PROFILE:塚本亮(つかもと・りょう)

1984年京都府生まれ。ジーエルアカデミア株式会社代表取締役。
同志社大学経済学部卒業後、英国留学を決意。高校生時代に全国模試で偏差値30台を記録したほどの苦手科目であった英語を独学で克服し、ケンブリッジ大学大学院へ。同大学院では心理学を専攻し、知能とモチベーションの研究をテーマに修士号を得る。
ケンブリッジ大学大学院に入学した2007年からIELTS講師として活躍。心理学の知見と自身の学習経験を生かした指導方法が注目され、国内有力大学などからのIELTSの講座依頼や、海外在住の日本人からの指導依頼が殺到している。著書は『IELTSライティング完全攻略』(明日香出版社)。英検1級、IELTS8.0。