「新しい学校」では、対面以外にオンライン指導の機会が増え、今後はオンライン指導の教員研修も必要になります。指導形態が多様になっても、基本にあるのは教師の確かな指導力であり、オンラインの場合は指導の質が更に重要だとされています。

ブリティッシュ・カウンシルの経験や調査では、指導スキルの研修をする際、説明だけでなく、実演を通してやり方を提示される、そして実際にやってみる機会があると、より具体的な理解が深まり、教師の自信が高まることがわかっています。そして、明日の授業に生かす割合が増えます。また、教師は、参加者同士の意見交換を通して、自分の実践をふりかえる時間も有意義だと感じています。

一方、OECDが実施した国際教員指導環境調査では、研修で教師が「各自の成長を共に構築する立場」というよりも、「知識の消極的な受け手」になっている傾向を憂慮しています。ここにおいても、教師の学びが主体的で自律的となる工夫は重視されています。

しかし、コロナ禍によって対面研修の開催に多くの制限が生じています。その中で注目されているのは、オンライン会議システムを使った取り組みです。ブリティッシュ・カウンシルでは、特にZoomの機能に注目し、対面と同じ研修成果を目指す、参加型の研修を実施しています。実際にそのオンライン研修に参加した受講者の声とともに、研修でできることを整理してみます。

【デモ授業を体験し、授業スキルを扱う】
Zoomを使うと、ペアワークを含め、対面授業のような言語活動が可能です。講師が行うデモ授業に生徒役で参加し、足場掛けや英語の使い方などを体験できます。

  • 「新しい指導法を実体験しながら学ぶことができ、ライティングを生徒にとって取り組みやすくする方法をより具体的に知ることができました。」
  • 「実際の教材を基に、ステップを踏んで教室授業のように進めていただけたので、流れがつかみやすかったです。」
  • 「パート毎に、わかりやすく、理論的な展開で、間にグループに分けて実践したり考えさせたりしてくださり、私の思考がスムーズに進んでいきました。そして、それは私が展開する授業において、とても参考になるものでした。」

【意見交換を通して、互いに学び合う】
他者との関わりがあると、学びが一層深まります。Zoomのブレイクアウトルーム(小部屋)やチャット機能などを活用し、意見交換の場を通して各自の経験をふりかえり、気づきを促します。

  • 「オンラインであってもインタラクティブに他の参加者ともペアワークをするなど工夫して進めてくれたので、3時間という時間をみっちり学びのために使えました。」
  • 「自分の普段の英語の教え方の手順についてふりかえり、改善できる良い機会でした。」
  • 「ペアワーク、グループワーク、チャットでの意見表示など積極的に参加できる仕組みになっていたので、対面と大きな差を感じることなく受講できました。」

学校へのICTの導入や、指導形態の多様化に対応するという点から、オンライン指導の研修も増えるでしょう。その場合、Zoom研修には次の利点もあります。

【「双方向でリアルタイムのオンライン授業」の実地体験】
オンライン授業を受けた経験がない教師は、まず自分自身が体験することがとても有意義です。オンラインでは、指示のしかた一つをにしても対面以上にていねいで効果的に行う必要があるため、体験が多くの気づきを与えてくれるでしょう。

  • 「読解の指導法でしたが、Zoomを使ったオンライン授業が双方向でできるモデルレッスンでもあったように思いました。今後休校になった場合は、参考にしたいと思います。」
  • 「オンラインでも始まる前から緊張し,ペアワークやグループワークになるとさらに緊張し、Zoomが初めてだからというのもありますが、話す時には更に緊張が増しました。生徒達はこのような思いで授業を受けているのかもしれないと改めて想像することができ、いかにリラックスして発話できる雰囲気を作れるかも大切だと思いました。」

 以上のように、Zoomを活用することで、オンラインでもスキル型の研修が可能であることがわかります。そして次の研修分野への示唆が見えてきます。

参考:
OECD, TALIS2018 Results (Volume I) Chapter 5. Providing opportunities for continuous development