ネイティブ・スピーカー=よい英語の先生?

英語学習において、「英語を上手に話せる教師から学ぶことが最も効果的だ」と捉える傾向があります。そのため、ネイティブ・スピーカーを重用したり、資格試験などの高得点者が優れた英語指導者とみなされることがあり、これは、学校にネイティブ・スピーカーの配置増加を求める声と関連があるようです。

教師の英語力がもたらすエビデンス

しかし、現実には、ネイティブ・スピーカーから英語を学ぶことが、非ネイティブ・スピーカーである教師から学ぶことよりも効果的である、という科学的根拠(エビデンス)は見当たりません。ネイティブ・スピーカーの教師からはより多くのインプットが得られたり、発音面で違いがあるという期待がありますが、ネイティブ・スピーカーと非ネイティブ・スピーカーが行った授業中のインプット量を比較した研究から、「ネイティブ・スピーカーかどうかがよりも、個々の教師の資質の問題が重要である」という指摘があります。発音についても、ネイティブ・スピーカーからのインプットを受けたかどうかによる音素識別能力の差は、あまり見られない、という研究も紹介されています。また、文部科学省が行った調査を元にすると、教師の英語力と生徒の英語力には相関が弱いことが明らかです。

母語としての言語力と外国語指導との違い

英語を教える以上、小学生を対象にするにしても、教師に一定の英語力が求められるのは当然のことで、中高生を教える上では、国際基準のCEFRでB2のスピーキングレベルは必要でしょう。けれども、英語を上手に操れるだけでは、教えることにおいては十分とは言えません。ネイティブ・スピーカーだからといって言語指導経験のある人ばかりではないのが現状で、言語を母語として話すことと、その言語の指導ができることとは全く別の問題です。文脈を日本語に置き換えて考えてみましょう。日本語話者であることと、日本語指導を効果的にできるスキルの有無は別ということは明らかです。

効果的な指導とは

また、有名な教育学者ジョン・ハッティの研究でも同様のことが立証されており、「高度な専門知識があることと、効果的な指導ができることとは別である」と指摘しています。これは、オリンピック選手イコール優れた体育教師、という訳ではないことと同じです。彼は、「専門教科における指導を行う際、明確ではっきりとした説明ができることや、生徒と良好な人間関係を築くことができる力が効果的な指導の上でより重要である」と結論づけています。ヨーロッパでの言語指導における研究では、教師の外国語に対する積極性や熱意も重要な要素だとされています。実際、日本の小中高どの校種でも、児童生徒と信頼関係を築き、明瞭でわかりやすい授業では、熱気があふれ英語が飛び交う授業が行われていることを目にしてきました。

必要なのは授業スキル

以上のことから、教師の資質向上においては、効果的な教室運営や生徒とよい関係性を築く方法、そして、明確な指示や説明ができる指導法等に焦点をあてる必要があると言えます。効果的な英語教授法の実践に不可欠な、専門的な授業スキルに対する理解を深めることが、子供たちの英語力を高めることにもつながります。

参考文献
Gardner, W. “The need for effective English teachers,” Japan Times. 10 Sep. 2016
バトラー後藤裕子. 『英語学習は早いほど良いのか』 (岩波新書、2015年)
吉田研作.「小学校英語の基本的考え方とこれからの方向性」、吉田研作編『小学校英語教科化への対応と実践プラン』(教育開発研究所、2017年)
Hattie, J. Visible learning: a synthesis of meta-analyses relating to achievement. (Routledge. 2009)
Enever, J., et al.  Early Language Learning in Europe. (British Council. 2011)

 

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