3. 言語活動をする時、教師は生徒に十分な「足場掛け」を提供していない、ことが判明

  • 2で「即興的なスピーキング活動を実施する」と回答した150名に対して、スピーキング指導の有効な「足場掛け」の実践度合いを把握する質問を行った。
  • 質問項目は、①「活動前の支援内容と頻度、②活動を複数回実施する割合、③複数回実施の際の支援内容と頻度。
【足場掛け】
  • 「足場掛け」(scaffolding)とは、学習者を目標達成に導くために、教師がレベルに応じて必要な情報や支援を与えること。(建築現場で建築物を作るために仮りに足をおく場に例えている。)
  • 第二言語習得(学習者が母語の次に学ぶ言語を習得するプロセスを研究する分野)においては、エビデンスに基づき、実績及び定評のある指導技術が広く世界で共有されている。言語活動を行う際には、教師によって適切な「足場掛け」を提供することが必要であるとされている。

①スピーキング活動の前に見本を提示したり、準備時間を与える教師は2割以下(5項目の平均)(図3)

  • 「役立つフレーズをクラス全員で練習する」を「いつも行う」は27%、「教師がモデルを示す」は25%。これは、大多数の生徒が、練習する英語の見本やゴールが常に示されていないことを指す。
  • 「モデルを提示しない」「フレーズを練習しない」ことを球技に例えると、基本練習(ボールの投げ方やパス回し)が実施されないことを指し、生徒にとっては基本スキルや知識が抽象的であいまいなまま、実践練習(試合方式)を行うことと同じである。
  • 「話す内容等を考える時間を生徒に与える」を「いつも行う」は15%。これは、大半の生徒が言う内容や英語表現を整理・組み立てる時間を与えられず、準備不足のまま活動が開始されていることを意味する。
  • 生徒は授業以外では経験することが限られるスピーキングを求められるため、「目指すゴールを教師が提示する」「そこに到達するには、どんな内容を、どんな順序で踏めばよいか」という【足場掛け】を教師が常時提供できるよう指導改善が求められる。

②上達のために繰り返し練習する機会を与えている教師は73%(図4)

  • スピーキング力の上達のためには、活動を1回実施した後にも、教師からの適切な足場掛けが必要であるため、その機会を与えているかどうかを尋ねた。
  • 「別のパートナーと繰り返す」が58%、「同じパートナーと繰り返す」が15%で、73%が複数の機会を与えている。
  • 一方、「次の活動に移る」という教師が4分の1存在する。これは生徒に「上達の機会が与えられていない」ことを指すことでもある。

③言語上達のためのフィードバックを常時提供しているのは10%(図5)

  • ②で「活動を繰り返す」と回答した115名に、2回目の活動をする前に行っている支援を尋ねた。
  • 感想的なフィードバック(よくできたという主旨)(28%)や非言語の内容(17%)が多い。一方、「誤りを指摘し、正しい言い方を教える」「新しい語いや表現を教える」という言語面のフィードバックは10-13%に留まり、正確さや流暢さの向上のための支援の提供は十分には実施されていないことが明らかになった。
  • また、生徒のメタ認知を育てる支援「自分のパフォーマンスをふりかえる」「生徒間で感想等を与える」は1割以下で、学習機会を有効に設定できていない現状が浮き彫りになった。
  • 国際教員指導環境調査TALIS(*2)で報告されているだけでなく、英語指導においても、「即時フィードバックを与える(形成的評価)」ことや、メタ認知を育てることは有効な指導法として世界的に定着している。日本の英語指導においても、世界で定評のある指導法を活用したり、指導に関するデータを適切に収集・分析し、指導の改善に役立てることは非常に有益である。

*2 OECD, TALIS2018 Results (Volume I) 

4. 「指導に自信がある」教師はわずか14%(図6)

  • 教師のスピーキング指導に対する意識を尋ねたところ、半数以上が「生徒のスピーキング力が上達している」と回答する反面、「授業で生徒スピーキング活動を実施することに自信がある」と回答するのは14%にとどまる。
  • 「生徒はスピーキングに対して無関心」と考える教師はわずか5%、したがって大多数は生徒はスピーキングに関心があると推定され、教師は生徒の希望に十分に添う指導ができていないことに対する葛藤が見られる。一方、学校がスピーキング指導に前向きでないという意見が10%ある。

 
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