Model photography of the new Tate Britain Rotunda staircase, Courtesy Caruso St John, Copyright Tate

Image: Model photography of the new Tate Britain Rotunda staircase, Courtesy Caruso St John, Copyright Tate

3年にわたる改修工事が終わり、新しくなった部分が11月に一般公開されたテート・ブリテン。今回の工事は、「ザ・ミルバンク・プロジェクト(The Millbank Project)」と題された20年がかりの大計画の第一段階にあたるもの。その対象となったのが、1897年にナショナル・ギャラリー・オブ・ブリティッシュ・アートとして出発したこの建物の一番古い部分で、4500万ポンド(約76億円)を投じ、洪水や戦争、何度もの増築のたびに微妙に姿を変えてきた建物の様式的な秩序の回復が図られた。

今年5月に一足先に公開された常設展示室10室に続き、今回お披露目になったのが、正面玄関とそこから先に続く部分。ドーム屋根の下に広がる新古典様式の円形ホール、カフェやレストラン、スタジオや図書館が改築、新設された地下フロアー、洪水の被害にあって以来80年以上も一般非公開となっていた二階のスペースなどがその主な部分になる。

なかでも見事なのが、円形ホールと地下をつなぐ新しい螺旋階段で、設計を請け負ったカルーソ・セント・ジョンの腕の見せ所だ。使われた素材は、元の建築に使われている大理石の模様によく似た人造石テラゾになるが、アールデコ風の美しいデザインが周囲の装飾に自然に溶け込み、まるで昔からここにあったかのような印象を醸し出している。また、階下に続く地下フロアも、教会の地下などによくある交差式ヴォールト屋根の空間へと変わり、各フロア間での統一感が強まった。

この統一感は、1928年のテムズ川の氾濫で被害を受け、その後は館長の住居や美術館のオフィスとして使われてきた二階フロアにもあてはまり、後に追加された壁などが今回取り除かれ、ヴィクトリア時代のレイアウトに復元された。その昔、プリントとドローイングの展示室として使われていた部屋は美術館の会員専用のカフェとなったため一般客が入れないのが玉に瑕だが、届いたばかりの収蔵品のお披露目の場として使われていた「グランド・サルーン」のほうは、セミナーなどの一般向けのイベントに使われるという。

また、今回の改修では、これまで雑然としていた地下の娯楽・教育施設もすっきりと統制された。装いを新たに登場したのが、「ジャノグリー・カフェ」と「レックス・ホイッスラー・レストラン」で、前者の天井には現代美術家アラン・ジョンストンが8名の助手とともに2週間ががりで描いた恐ろしく細かい鉛筆ドローイングが施されている。一方、レストランのなかには、モダニズム期の画家レックス・ホイッスラーが1920年代に描いた有名なフレスコ画があり、これが今回修復されて、店の再オープンに合わせて公開されている。

このレストランの隣には、テート・ギャラリー所蔵の近現代美術コレクションや資料を見せる「アーカイブ・ギャラリー」も新たにオープンした。展示室のサイズは小ぶりだが、ターナー賞ノミネート作家のポール・ノーブルがセレクターを務め、先ごろ他界したアンソニー・カロからYBA作家のサラ・ルーカスまで17名による比較的に珍しい作品群が展示されている。

メインフロアーの常設展示の会場では、5月の公開時に掛け替えになった新しい展示「BT Walk Through British Art」が好評開催中。20室あまりを使った展示は、テーマ別やジャンル別の構成を廃し、約500年にわたる英国美術を時系列にそって並べたもの。年代順という定番の展示方法ながらも、スタイルやムーブメントの同時性がわかりやすいと評判。

この掛け替えに際して登場した、半年毎に内容が変わる「BT Spotlights」の展示室では、今回の建物の公開と同時に新企画が始まり、マーティン・クリードや、ジョン・アコマフラ、クリス・ショウら英国の現代美術家の作品が紹介されている。

当時まだテート・ギャラリーと名乗っていたテート・ブリテンでは、100年祭を祝った1990年代にも増改築が行われているが、2000年にテート・モダンが華々しく開館してからはその陰に隠れて印象がやや薄れ気味だった。しかし、今回の改修を機に、16世紀から現代までを扱うブリティッシュ・アートの居城としての足場がいっそう固まったようだ。テート・モダンの展示プログラムの矛先が従来の欧米中心からアフリカ、中東、東洋へと広がっているなか、自国の文化芸術を保護し大衆に広めるテート・ブリテンのこの役割は今後ますます重要になっていくだろう。ミルバンク・プロジェクトのさらなる展開が楽しみだ。(文:伊東豊子)

2013年12月

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