Pompeii from the British Museum
Pompeii from the British Museum ©

British Museum

今年3月末から6ヵ月間に渡り、ロンドンの大英博物館にて開催され、記録的な動員数を達成した特別展『ポンペイとエルコラーノの生と死』(原題:Life and Death in Pompeii and Herculaneum)が映像プログラムとして世界各地の映画館で公開され話題となっている。

西暦79年、イタリア南部のヴェスヴィオ火山が大噴火を起こし、火砕流がナポリ近郊の都市ポンペイとヘルクラネウム(現在のエルコラーノ)を襲った。人々は瞬く間に命を奪われ、たった一昼夜の間に降り積もる火山灰の中に街と共に埋もれてしまう。約1600年経った後、その上に新たに作られた街の住人が地中にあった遺跡の一部を発見。伝説の古代都市はゆっくりと目を覚まし、その後の本格的な調査によって、豪華な装飾品や美術品、神殿、劇場、住宅のほか、年月と共に消え去った人間や動物の体までもが火山灰のなかでいくつもの空洞となって発見され始めた。

大英博物館で公開されたものは、そのほとんどがナポリ国立考古学博物館で所有されている、これまでイタリア国外に持ち出されたことがなかった450点以上の貴重な展示物。なかには死者が残した空洞に石膏を流し込んで作られた家族や犬の像もあり、展示は古代ローマ人の生き生きとした日常生活だけでなく、彼らの最期の瞬間を通して、すべてを奪い去った天災の恐ろしさと二つの街の悲劇を圧倒的なインパクトで見る者に伝えた。これほど大規模な展示はロンドンでも約40年振りとなるため、会期中は連日早朝から大勢の人が入場券を求めて列をつくり、半期の時点で来場者数は170万人を突破。1972年の『ツタンカーメン展』、2007年の『中国 兵馬俑展』以降の大英博物館史上に残る大記録を打ち立てた。

今回、映像プログラムとして世界各地で上映されているのは、会期真っ只中の6月中旬に全館を丸一日閉館して敢行された“スペシャル・プライベートツアー”。大英博物館にとっても画期的な試みとなったこのイベントでは、一週間の綿密なリハーサルを経て、その様子が博物館中央の特設スタジオからハイビジョンで英国とアイルランドの280カ所の会場で待つ45,000人の観客に向けて生配信された。司会を務めたのは、本国ではお馴染みの歴史家のベタニー・ヒューズとテレビプレゼンターのピーター・スノー。さらに、大英博物館館長のニール・マクレガーをはじめとする専門家たちが、発掘物から解明された最新の研究成果を展示物と共にわかりやすく解説した。

大英博物館はこのほかにも、展示物の詳細や当時の噴火の様子をタイムラインで見ることができるスマートフォンアプリの配信を行うなど、テクノロジーを駆使した様々な試みで、これまで博物館を訪れることがなかった新たな層を取り込み、会期終了後の現在も上映会を通して動員数を拡大し続けている。

現在までに映像プログラムは、フランス、ドイツ、ロシア、オーストラリアなど世界各国ですでに上映され、東京での上映は11月2日から22日まで恵比寿の東京都写真美術館ホールにて予定されている。日本にいながらにして、世界屈指の博物館のプライベートツアーを楽しめる貴重な機会。お近くの方はぜひ足を運んでみてはいかがだろう。

執筆:磯崎智恵美

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