Musicity のニックとサイモン
Musicity のニックとサイモン

ブロードキャスターであり音楽キュレーターでもあるニック・ラスコムと、建築やデザインを手がけるジャンプ・スタジオの創設メンバーでもあるサイモン・ジョーダン。UK発の新しい音楽プラットフォーム、Musicityを考案したふたりの特別インタビュー。

——まずはご自身についてお聞かせください。

Nick:ニック・ラスコムです。ブロードキャスター、DJ、音楽キュレーターです。BBC RadioやレゾナンスFMで番組を担当し、iTunesのキュレーションも約4年間行っています。ライブイベントの企画や、音楽業界のコンサルティングもしています。

Simon:サイモン・ジョーダンです。クリエイティブ・ストラテジストとして活動し、設立から12年が経つ「ジャンプ・スタジオ」という建築とデザインの会社を経営しています。主に物理空間のデザインに携わっていますが、デジタル空間のデザインにも興味を持っています。

——「Musicity」のアイディアを思いついたのは、いつ頃でしょうか?

Simon:2010年だったと思います。僕たちはすでに親友で、お互いの専門分野にとても興味を持っていました。ふたりがどのようにコラボレーションし、それをどう世に送り出せるかをいつも話し合っていたのです。

——Musicityは建築や風景、そして音楽という要素で構成されていますが、それはなぜでしょうか?

Simon:これは個人的な意見ですが、僕にとっての建築やデザインはすべて“体験”なのです。デザインとは、日々の人間の体験をかたちづくり、高めるためのもので、デザイナーに課せられた使命はそこにあります。僕は、Musicityを通して建築物や風景に体験を生み出せるかどうかに興味がありました。そこで、ユーザーをより物理的な世界と繋ぐため、その中心に音楽という要素を加えたのです。

——どのような基準でMusicityに参加するアーティストを選んでいますか?

Nick:仕事柄、日々革新的な音楽を探しているのですが、Musicityに対しても同じで、常に最高のクオリティを生み、より多くの人に知られるべきミュージシャンを基準としています。

——Musicityはユーザーに何をもたらすでしょうか?

Simon:最も突き詰めたかった部分は、やはり“体験”です。建築的な面で言えば、ユーザーにその場所の魅力を伝え、そこに自分の居場所を見つけてもらうことですが、Musicityの重要な点は、その手段に音楽を用いている部分です。ユーザーは、実際にどこかに足を運ばなければ楽曲を入手できません。どのように街に新たな側面を加え、どのようにユーザーはそれを理解・体験し、音楽というレンズを通した時にどのような街に見えるのか。それが僕たちにとってのユーザーエクスペリエンスでした。

——今回の舞台である東京の印象を教えてください。

Nick:12年前に初めて訪れた時は、今まで自分の経験したものとはすべてが異なり、人生最大のカルチャーショックを受けました。光や音はもちろん、熱気に包まれた街と冷静な人々のコントラストも不思議でしたね。一番印象的だったのは表参道の景色です。まるで水槽の中の魚のように、大勢の人が流れるように歩いていました。僕のイメージは“美しいトロピカルな水槽”ですね。

——今後、Musicityが世界の各都市に広がるにあたり、どのようなことに期待しますか?

Nick:時間の経過と共に、より深く豊かなサウンドトラックを生み、継続的な音楽プログラムになってほしいですね。世界中の大勢のミュージシャンがMusicityの一部となることもとても楽しみにしています。

——Musicity以外で関心をお持ちのことがあれば教えてください。

Simon:インターネットもデジタルツールも以前より手に入れやすくなり、最近ではそれをデスクトップ上で使う必要もなくなりました。このデジタルな世界が日々の生活にもたらす変化が気になります。

Nick:新しい音楽の楽しみ方やプラットフォームでしょうか。すべてに対して間口が広がり、ミュージシャンたちは今までのようにレコード会社を通して曲を発表するという一連の流れを辿る必要がなくなりました。彼らにとって自由な環境となり、今はとても刺激的な時期だと思います。

——現在、注目している音楽はありますか?

Nick:ロンドンについて言えば、アンダーグラウンドからメインストリームへと成長し、音楽シーンに多大な影響を与え続けているダブステップです。エレクトロニック・ミュージックやクラブ・ミュージックも90年代より規模が大きいように感じます。また、驚くべき才能を持つ10代のプロデューサーも次々と現れています。Youtubeなどで昔の楽曲に容易にアクセスでき、インスピレーションを得られるからでしょう。

——最後に、Musicityに参加する人たちにメッセージをお願いします。

Nick:NYやロンドンに住む人たちが持つ特有の“その街に恋をする”という感覚とは少し違い、東京に住む人々は便利で暮らしやすい東京が好きなのでは、と感じることがあります。皆さんにとってMusicityが東京という街に恋をするきっかけになればと思います。

(インタビュー:磯崎智恵美)

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