ジム・リチャードソン
ジム・リチャードソン

「デジタル・クリエイティブ・カンファレンス」

スピーカー:ジム・リチャードソン(SUMOデザイン マネージング・ディレクター)

日本ではソーシャルメディアの活用がいまだ初期の段階にあるということは、今回の滞在中、何度も耳にした。活用に非常に乗り気な人々が存在する一方で、英国のアート機関がFacebookやTwitterといったソーシャルメディアで展開している方法が日本のオーディエンスにも効果的なのか判断しかねている人々もいるようだ。

Facebookは日本でも拡大しつつあるが(皮肉にも、映画『ソーシャル・ネットワーク』の公開がその要因のひとつだ)、日本の主要なソーシャルメディア・プラットフォームはmixiだ。しかしmixiは、Facebookで行われているようなブランドのマーケティング活動には対応していない。あるいは、単に活用されていない。

私が気づいたことのひとつに、ソーシャルメディアを思う存分活用することに美術館が尻込みするのは、スタッフの手が足りないということにある。日本の美術館の多くはマーケティングの部署を設置しておらず、もし存在したとしても、人員に限りがあるためソーシャルメディアの適切な運用は困難なのだ。

また、日本のアート機関がソーシャルメディアをどう活用するのか方向づけるかもしれない、別の文化的要因がある。ヨーロッパやアメリカ社会の根底には個人主義があるが、日本は集団に重きを置く文化であるということだ。

この事実は、ソーシャルメディアを活用する絶好の機会であるように思える。アート機関が観客とともに体験を作り出す機会を提供することで、おそらく、単なる“いいね!”や“ツイートする”の反応以上に深く、意味のあるソーシャルメディアの活用が望めるだろう。

今回の日本滞在は、ヨーロッパと日本のアート機関がとる、ソーシャルメディアの活用法の違いについて、私に考える機会を与えてくれた。また、足を運んだ文化庁メディア芸術祭では、モーションキャプチャーを使ったゲームを試したり、IS Paradeを目にするなど大きな感銘を受けた。

ブリティッシュ・カウンシルが開催したデジタル・クリエイティブ・カンファレンスのなかでは、日本人スピーカーたちが、非常に魅力的なケーススタディをいくつか紹介してくれた。特に私の興味を引いたのは、フェスティバル/トーキョー主催の「完全避難マニュアル」だ。

これは、行く先に何があるのかを知らせないまま、オーディエンスを29の場所(彼らの呼ぶところの“避難所”)に導くというパフォーマンスだ。オーディエンスは現地で、ホームレスの人々といった“日常の生活の中では不可視”な他者と出会う。

どの“避難所”を訪れるべきか決めるには、「完全避難マニュアル」のサイトにある質問に答える。これらの質問に対する回答に基づき、観客とパフォーマンスを結びつけるのだ。

人々が内容を知らずに29のパフォーマンスに参加するというアイデアに、私は魅力を感じた。また、ホームレスなどの難しいテーマに直面したオーディエンスの報告を、ぜひとも聞いてみたいと思う。

東京への旅は、私にとって非常に刺激的なものであった。新しいアイデアを持ち帰るだけでなく、私のソーシャルメディア・ネットワーク上の新たなつながりも、数多く得ることができたからだ。このつながりは、今後も日本から学び、かつ英国からアイデアを共有し続ける上で、大きな支えとなるだろう。

2011年3月
ジム・リチャードソン

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