David Shrigley Headless Drummer, 2012, Animation, 1 minute, Courtesy of the artist and Stephen Friedman Gallery, London.

今日、アーティストの多くが協働作業を通して作品を制作している。そんなアーティストの一人であるデイヴィッド・シュリグリーの活動の中心にあるのが、ユーモラスで示唆に富むアニメーション作品である。本インタビューではシュリグリーのアニメーター、ジミー・ニューポートにその制作プロセスや、シュリグリーとのコラボレーションについて語ってもらった。

アニメーターになりたいと思ったきっかけは? どんな風にキャリアをスタートさせたのですか? 

最初からアニメーターになりたいと思っていたわけではありませんが、漫画、コミックストリップ(コマ割りの短い漫画)、グラフィックノベル(長編漫画の単行本)への興味が自ずと自分のイラストやちょっとした落書き、作品に影響を与えていました。

アニメーターの道を歩み始めたきっかけは、アニメーション制作用のソフトウェアが登場したことです。Photoshop、Illustrator と一緒に、Flash や After Effects を駆使することで、2Dアニメーションの手法をデジタル上で再現できたのですーーもちろんたいていの場合はということですが。

初めてデイヴィッドと仕事をしたのは、ロンドンのブリックレーンにある Slinky Pictures(スリンキー・ピクチャーズ)でのことでした。私は、当時出始めたばかりのインターネット向けバイラル・コンテンツの制作のために呼ばれ、他のフリーランスのアニメーターたちと一緒に一連のアニメーション作品を担当していました。そこでデイヴィッドと意気投合し、その後は個人的に彼と作品をつくるようになったんです。

デイヴィッドと一緒に手がけたのはどの作品ですか? 一番のお気に入りはどれですか? 

幸運なことに2006年以降の作品はほとんど私が手がけています。一番好きな作品を選ぶのは難しいですが、特に《Walker》[ウォーカー]は実現が難しかった分、やりがいがありました。この作品は、2011年にロンドンのラウンドハウスで行われたロン・アラッドによる《Curtain Call》[カーテン・コール]のために制作されたもので、360度に広がるカーテンの上を、プロジェクションで映し出された巨大な男が闊歩(かっぽ)するというものでした。

この作品では、人物のアニメーションを完璧にループさせなくてはならない上、複数台のプロジェクターを駆使した巨大なスケールの映像を制作しなくてはなりませんでした。デイヴィッドと私にとってはかなりの挑戦でしたが、この伝説的な会場で、巨大な男が足音を轟かせながら歩く光景を目にした観客の反応を見るのは、感動的でした。

デイヴィッドのシンプルな線画をどのようにアニメーションにしていくのでしょうか?

まず登場人物やモノの要所要所のポーズ・所作を描いてから、その間を埋めるいくつものポーズを描き、なめらかな動きをつくり出します。すべてのドローイングが1秒間25コマの速度で再生されると、そこに動きが生まれます。

協働作業は大きな信頼を必要とします。たいていはデイヴィッドからメールが送られてきて、最初のアイデアがドローイングや文章とともに共有されますーー場合によってはこれにサウンドが加わることもあります。そこからは定期的に制作過程のアニメーションへのフィードバックをもらうというプロセスを踏みます。

こうしたやりとりを何度も繰り返すのですが、いろいろ試すうちに作品が変化していくこともあります。このように、制作プロセスは必ずしも一直線に進行するわけではありません。

Headless Drummer process. Step 1
《Headless Drummer》[頭のないドラム奏者]制作プロセス その1:最初にデイヴィッドからドローイングのイメージファイルとドラム演奏が録音されたmp4ファイル、その他に参考資料としてドラムセットのレイアウト図(どのドラムがどの音に対応しているか分かるように)が送られてくる。デイヴィッドのドローイングには、叩くドラムによって変わる演奏者の腕の主要なポジションが明示されている。
Headless Drummer process. Step 2
《Headless Drummer》制作プロセス その2:フレームごとにドラマーの手足とドラムの動きをつくっていく。
Headless Drummer process. Step 3
《Headless Drummer》制作プロセス その3:腕やシンバルの動きを構成するためにフレームごとのドローイングをいくつも用意する。

アーティストの独特なスタイルをアニメーションで再現するための秘訣はなんですか?

アニメーションをつくる過程で一番難しいところです。一定期間デイヴィッドのスタイルに倣って描いているうちに、たいていは自然と作品のスタイルや特徴が再現できるようになります。

もしデイヴィッドが思うように再現されていないと感じる箇所があったり、私の方でどうしても決まらないポーズがあれば、デイヴィッド自身にドローイングを提供してもらい、それをそのまま使ったり、トレースして使用したりします。

制作のどの段階で音声が入ってくるのでしょうか?

音声は、制作が始まってすぐ、もしくは初期段階で録音されるのが理想的です。これは映像のペースや作品の雰囲気が音声によって左右されるからですーー登場人物によって物語が進んでいくような作品は特にそうです。

制作の最終段階で音声を録音することもありますが、その場合は必要に応じてアニメーションを調整します。たいていデイヴィッドか私が録音した「ガイド音声」をもとに制作を進めます。

この手の仕事の最も難しい側面はなんでしょうか?

多くの場合、一見単純そうに見える所作や動きをうまくアニメーションにすることですね。

例えば《Laundry》[洗濯]では、走っている馬の体に泥が飛び散り、徐々に汚れの範囲が広がっていくアニメーションをつくるようデイヴィッドに頼まれました。単純そうに思えますが、この作業がかなり入り組んでいて複雑なのです。ゆっくりとした細かい動きを再現するのは特に難しいんです。

デイヴィッドとの協働作業で特に重要なのは、アニメーションが彼の世界観やスタイルと一致していることです。大げさにしたり、余計な要素を付け足したりした途端に違和感が出てしまいます。

デイヴィッド・シュリグリーの作品についてどう思いますか?

彼の作品は、見ていると思わずにやっとしたり、くすっと笑ったりさせられます。示唆的な、あるいはインパクトのある絵をユーモアと両立させることは決して簡単ではありません。しかし、彼の作品は見事にこの二つを両立させ、テーマの本質に切り込んでいったり、その多様な意味を明らかにしたりします。

彼の作品のこういった側面が、他のアート作品がなかなかできないような作品と人とのつながりを可能にしているのです。

 

[頭のないドラム奏者]ほか、シュリグリーによるアニメーション作品[アーティスト]、[新しい友だち]、[エンドレス・ジョイント]、[洗濯](字幕あり)、[ドア](字幕あり)は、水戸芸術館にて2017年10月14日(土)~2018年1月21日(日)開催中の『デイヴィッド・シュリグリー「ルーズ・ユア・マインド―ようこそダークなせかいへ」』にて上映されます。