セッション風景-コラージュ
セッション風景-コラージュ ©

ブリティッシュ・カウンシル

安心して認知症と暮らせる社会

900万人。これは2012年時点で、65歳以上の高齢者のうち認知症および、認知症になる可能性がある軽度認知障がいの人の数です。日本だけでなく世界各国で認知症の人が増加している今、デザインの視点から認知症の人もそうでない人も、皆が安心して暮らせる社会づくりを考えるフォーラムを2013年8月29日(木)に開催しました。フォーラムでは、日英に共通する課題である認知症の人やその周囲の人々の生活の質についてデザインを通して何ができるか、両国の取り組みや学びを共有。デザイン関係者、民間企業、行政や政府関連機関、社会起業家、認知症の家族を持つ方や当事者の方など様々な人が参加しました。

当日は日英のスピーカーによるインスピレーショントークと、参加者同士のディスカッションという二部で構成。最初に、ブリティッシュ・カウンシルの駐日代表、ジェフ・ストリーターから高齢社会や認知症について日英で連携することの重要性についてスピーチがあった後、英国デザイン・カウンシルのカミラ・ブキャナン氏と株式会社スマート・エイジング代表取締役で特定非営利活動法人認知症フレンドシップクラブ東京事務局代表の徳田雄人氏より、日英の認知症を取り巻く状況やそれぞれの活動についてプレゼンテーションがありました。

デザイン・カウンシルの大きなミッションの一つは、人々の生活の質の向上や、より良い社会の構築をデザインの力で促進すること。デザインと聞くと、形として見えるプロダクトやグラフィックデザインを想像しがちだが、デザイン・カウンシルでは何かを生み出す時のアプローチや考え方、プロセスを“デザイン・シンキング”とし、社会の仕組みやサービス改善におけるデザインの重要性を推進しています。さらに、さまざまな社会課題について、多様なセクターが連携してデザイン的アプローチを用いてソリューションを生み出す取り組みも積極的に行っています。プレゼンテーションでは、英国政府の保健省と共同で行ったプロジェクト、『Living Well with Dementia』についての紹介もありました。これは認知症の人の“Quality of Life(生活の質)”を向上させる実用的な製品やサービスについてアイデアを公募し、プロトタイプ開発援助を行うコンテストです。最終的に5つのプロジェクトが選考されました。その中で、現在製品化の最終準備段階にあるプロジェクトの一つが、Ode 。認知症の人の中には食事をすることを忘れ、栄養不足に陥ることが多い事に着目し、食事の時間になると食べ物の匂いを放つ芳香機で、これにより認知症の人の食生活を改善させるとともに、精神的安定をサポートする効果が認められています。もう一つのプロジェクト、Dementia Dog は、認知症の人でも普通に生活できる自由を尊重し、必要なサポートが提供できる認知症犬の育成プロジェクトです。

続いて、株式会社スマート・エイジング代表取締役の徳田さんは、認知症の人が、専門家の管理する空間に隔離される時代から、より開かれた空間(地域)で、認知症の人専用ではなく、より一般的な商品やサービス・仕組みの中で生きていく時代へとシフトしている点を指摘。認知症について、“生活の上で支障が出ている状態”と定義し、生活をする中での支障が取り除かれると認知症の人の数は減少する。そして、社会のデザインを変えれば、認知症の人もそうでない人も生活に支障なく暮らすことができるとお話しされました。

お二人のお話の後は、参加者同士で気づきを共有し、新たな視点や学びから、できそう、やりたいと思った事などを書いた紙で壁面コラージュを描きました。参加者それぞれが、現在の活動や、個人的体験をもとにさまざまなアイディアを共有しました。

【フォーラム詳細情報】

インスピレーショントークの内容や参加者の気づきやアウトプットを含めたフォーラムの詳細は近日中に報告書として公開致します。 

【開催概要】

日時: 8月29日(木) 18:00~20:00
会場: 東京ミッドタウン・デザインハブ (インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター)
主催: ブリティッシュ・カウンシル
協力: 公益財団法人日本デザイン振興会、株式会社スマート・エイジング、国際大学GLOCOM社会イノベーションラボ、株式会社富士通研究所

【スピーカー略歴】

Camilla Buchanan(カミラ・ブキャナン)
Policy Advisor、Insight Team Design Council

英国デザイン・カウンシルのInsight Teamで、英政府の方針・計画に対する助言、公共政策の改正を働きかけるプロジェクトの運営や、外部組織との協働の可能性を探るポリシー・アドバイザーを務める。
ヨーロッパと英国の公共政策を専門とし、ブリティッシュ・カウンシル、欧州委員会、クラフツ・カウンシルで働いた経歴を持つ。

徳田 雄人
株式会社スマート・エイジング代表取締役
特定非営利活動法人認知症フレンドシップクラブ理事

東京大学文学部行動文化学科社会学専修卒業後、日本放送協会(NHK)入局。番組ディレクターとして認知症・がんなど、医療・介護についての番組を多く制作。2009年にNHKを退職後、NPO法人地域認知症サポートブリッジ事務局長、NPO法人認知症フレンドシップクラブ東京事務局代表に就任。認知症をテーマに、企業・行政との協働プロジェクトやイベントの企画・運営を行う。

2012年に株式会社スマート・エイジングを設立、社会の高齢化が進む中で先を見通し、必要な備えをしながら賢く歳をとっていける「スマートエイジング社会」の実現に向け活動中。

関連サイト